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青い鳥 [重松清]

青い鳥

青い鳥

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本

学校ではいろいろな生徒がいるが、その中でも
寂しい生徒を救うために一人の先生がそっと
静かに生徒に寄り添い、ひとりぼっちではないと
救いの手を差し伸べてくれる、切なくも心温まる
優しくて厳しい8つの短編から構成される物語です。

「ハンカチ」
軽はずみな言葉によって同級生に不快な想いをさせて
しまったことが、逆にクラスの中で孤立させ、
場面寡黙症になってしまい言葉を失ってしまう女の子。

「ひむりーる独唱」
自分でもはっきりとした理由がわからないまま
先生をナイフで刺してしまった男子生徒。
少年院から帰ってきてからは、より一層孤立感を
深めてしまう。

「おまもり」
父親がおこしてしまった交通事故で、ひとりの女性が
他界してしまった。そんな時クラスの子が自転車に
乗った中年のおじさんにぶつけられ足を骨折してしまう。
「犯人」と中年のおじさんを呼ぶ声に、父親のおこして
しまった事故が重なり「犯人」という言葉に胸の痛めて
しまう女の子。

「青い鳥」
ひとりの少年がクラスの男子生徒たちからたかりの
いじめを受け、転向してしまう。だがクラスの男子生徒
達にとってはそれがいじめだという印象が薄かった。
無理を強要した訳でもなかったことがそう思わせている
のだが、クラスに置かれた転向してしまった生徒の机が
彼らに事の重さを否応なしに伝えてくる

「静かな楽隊」
私立の中学受験に失敗し、公立の中学に通うことになった
生徒は自分のプライドを壁にして、自分の帝国を築き、
その中でしか自分を守ることが出来ずにいる。
そんな彼女との関係に少しずつ息苦しさを感じ、帝国から
離れることを願うひとりの生徒。

「拝啓ねずみ大王さま」
父親の自殺から、私立の中学に居られず公立の中学に
転向してきたのだが、そこになじめずにいる男子生徒。

「進路は北へ」
私立の中学から公立の高校へと進路を希望する一人の
女子生徒。受験する事なく高校へ進学できる道を蹴って
外の世界を求める。かつていじめが原因で学校を去って
いった同級生の影が彼女の心に重くのしかかっていた。

「カッコウの卵」
荒れた中学時代を送っていた時に出会った恩師との偶然の
再会を喜んだのも束の間、ある学校でトラブルを起こして
しまう。だがその学校は恩師の今勤めている学校だった。
再び恩師に救われる。

どの物語に登場する生徒も、内容が違えど心に傷を負って
苦しんでいる。
吃音でありながらも、一所懸命伝えるべきことを語る教師。
不思議と吃音でありながらも、言いたい事が胸の中にすんなり
と落ちていく。
多くを語ることなく、大切な事だけを語っていく。
印象的な言葉が物語の中に、甘いだけでなく厳しさを伴った
言葉で存在する。

「いじめは人を嫌うからいじめになるんじゃない。
人数がたくさんいるから、いじめになるんじゃない。人を
踏みにじって、苦しめようと思ったり、苦しめてることに
気づかずに苦しくて叫んでる声を聞こうとしないのがいじめ
なんだ」

「一生忘れられないようなことをしたんだ。みんなは。じゃあ
みんながそれを忘れるってひきょうだろう?不公平だろう?
野口くんのことを忘れちゃだめだ、野口くんにした事を忘れちゃ
だめなんだ、一生。それが責任なんだ」

「先生がほんとうに、答えなければいけない生徒からの質問は、
わたしはひとりぼっちですか、という質問だけなんです。
答えは一つしかないんです。そのために、先生はお父さんや
お母さん以外のオトナのなかで、みんなのいちばんそばにいる
んです。先生がそばにいることが、答えなんです」

「ひとりぼっちが二人いれば、それはもう、ひとりぼっちじゃ
ないんじゃないか、って先生は思うんだよなあ。
先生はひとりぼっちの子のそばにいる、もう一人のひとりぼっち
になりたいんだ。だから先生をやってるんだ」

「嘘をつくのは、その子がひとりぼっちになりたくないからですよ。
嘘をつかないとひとりぼっちになっちゃう子が、嘘をつくんです」

「嘘は、悪いことじゃくて、寂しいことなんですよ」

正直、この物語を読むのに痛みが伴いました。途中でやめて
しまおうかとも。楽しめるっていうのとは違います。
でも、やっぱり目を逸らしてはいけない気がして最後まで
読みました。
自分の通ってきた中学時代。思い当たるような物語もあったり
そうでなかったり、いろいろと思うことはありますがこの物語
の中で語る村内先生の語る言葉には少なからず重さを感じます。
ただ単に悩み苦しんでいる生徒に甘い言葉をかけるだけじゃな
い厳しさをも伴う言葉が心に響きますし、軽々しさを寄せ付け
ない気がします。
村内先生自身の事が殆ど描かれていないのが、少し残念なような
気がするのですが、この物語の中での先生の役割や大切な事しか
言わないという姿から、それはそれほど大切な事でもなく、これ
で良かったんだなと思います。
人によって好みの分かれる物語だと思いますが、作者の真摯な
姿勢が伝わってきます。
実際に教壇に立ち、生身の生徒と接する先生達はこの物語のよう
にすんなりといかない現実に苦しんでいるかもしれませんが、
同じように生徒達も苦しんでいる事を忘れないでいて欲しいなと
思います。
村内先生の姿はあくまでも理想かもしれないが、理想を捨てて
しまった先生であって欲しくないなという気もします。

 


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卒業 [重松清]

卒業

卒業

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫
 
4つの物語で構成される短編集。
どれもが卒業という意味を抱えた作品で感慨深いです。
中でも表題作の「卒業」と「追伸」は印象深く
自身の経験も含めて苦味が胸に広がる作品でした。
「卒業」ですが、主人公渡辺の勤める会社にある日
突然押しかけてくる女子高生の亜弥。
自分の産みの父親は自分が産まれてくる前に、投身自殺で
すでに他界しており、それを知らされたのは亜弥が高校生
になったとき。今まで本当の父親だと思ってきた人に
血のつながりが無いことを知らされる。
自分の血のつながった父親になるべきだった人とは
どんな人だったのかを探す日々が始まる。
そしてその日々のスタートを、本来の父親であるべき男、「伊藤」
の学生時代の親友である渡辺のもとを選んだ。
渡辺はこの日からかつての親友を記憶の奥から蘇らせることを
試みる。しかし友人である渡辺に伊藤の人としての人生、伊藤自身の
全てを語ることなで出来なかった。行き詰った時に渡辺は亜弥の
両親に会い今までの経緯を語り、両親からのフォローを求めるのだが
そんな中で、亜弥は伊藤と同じ道を辿ってしまうのだが、両親の
愛情に支えられて亜弥は次第に、自分の経験していない過去からの
卒業を迎える。
血縁関係であるべき父親から卒業し、血縁関係の無い両親との
新たな家族の絆を築きあげていく。
家族はそこにあるのではなくて、築いていくものなのだと感じる。
物語は物語としての設定はあるが、普段の自らのリアルな日々の中でも
感じるものを改めて物語からのメッセージとして受け取った気分。
「追伸」はこれまた血縁関係の有無を越えた家族の物語。
主人公敬一は小学6年生で母親を病気で亡くす。
闘病生活の中で記した母の日記を読み、自分の母親は永遠にこの人だと
心に刻む。
そんな少年の心をよそに、父親は再婚をする。何の前触れもなく目の前に
現れたふくよかな女性を母親だと受け入れられずに心を頑なに閉ざす敬一。
そして、敬一の大切な、実の母親の日記は父親に取り上げられ、新しい
母親には、この日記が欲しいのなら自分のことを母親と呼べと交換条件を
出されてしまう。自分の母親は永遠に、亡くなった人だと誓った敬一は
この交換条件を飲めなかった。
そんな敬一もやがて大人となり会社勤めをする傍ら、文学賞を受賞する
兼業作家となっていた。母親との関係をテーマにしたエッセイを雑誌に
掲載するようになるのだが、それはエッセイと呼びがたい内容だった。
そんな仕事ぶりを妻はなじり、義母の哀しみを訴える。
またこのエッセイを読んだ義弟もまた義母の苦しみをぶつけてきた。
そして還暦を迎えた義母のもとへ帰省する敬一。
そこで義母の、敬一を思う情に打たれてしまう。
この物語でも血縁関係を超えたところでの家族の情を切なさを伴って
与えられる。
長い年月の誤解を融解する母としての情。
長い年月をかけての母を亡くした悲しみからの卒業。
幼い少年には受け入れがたかった、新たな家庭環境は自分の家庭環境と
ダブって感情移入せずにはいられなかった。
敬一の想いに、自分だったとしてもそう感じるという共感めいた感情と
敬一の父親、義母に対する無神経さに不快を感じたりもしたが、作者の
用意した、義母の深い情には、最後にやられてしまったという感じが
残りました。
家族ならでは温かさと、関係が上手く築けなかった時の家族であるが故の
苦しさが読者の気持ちを右に左にと揺さぶる物語だと言えるような気がします。

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送り火 [重松清]

送り火

送り火

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/01/10
  • メディア: 文庫

9つの物語が私鉄沿線という軸でつながった短編集。
重松さんらしい作品と言っていいでしょうか。
表題作となっている「送り火」が自身の日常と重なって
感慨深いものでした。
閉園した遊園地の近くの団地に住む家族の物語。
家族の笑顔、幸せを考える父親を対照的な二人の
タイプで対比させている。
弥生子の父は弥生子がまだ少女であった頃に過労が
祟って他界していた。
母は父の亡き後、子供を育て現在は閉園した遊園地の
近くの団地にすんでいる。
老いた母と同居を望む弥生子を、このままここで住みたいと
断る母。
馬車馬のごとく働き手に入れた我が家。ここが好きだし
他界した父も好きだったこの家から離れたくないと。
しかし、隣接する遊園地へ、約束しながらも仕事の都合で
連れて行ってもらえなかった弥生子にとっては、そこは
蒼い想いばかりが思い出される場所だった。
母が弥生子の申し出を断った時に、これまで蓋をしてきた
想いが噴出し、強い言葉でこの家への想い、無理して
家を買った父への想いをぶちまけてしまう。
そんな弥生子に対して母は静かに父を語る。
結婚して、家族を生活の中心にした日々を送る夫との
違いに、弥生子は父が家族を蔑ろにしていたとの想いが強かった。
母の語る父は、そんな弥生子の想いを溶かす温かさを伴った
言葉だった。
家族の幸せ、笑顔を第一に考えてくれる想いがあれば、形の
違いこそあれそれが幸せなんだと思わせてくれる。

何気ない日常で見かける風景を題材にして描かれた作品であり
何気ない題材故にそこにある物語は、身近なものに仕上がっている。

全体を通して切なさ、優しさが漂う作品だと感じました。

 

 


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