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使命と魂のリミット [東野圭吾]


使命と魂のリミット

使命と魂のリミット

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12/06
  • メディア: 単行本


主人公氷室有紀は研修医。子供の頃愛する父を失った。
心臓の手術に失敗したのだ。難しい手術だったのだが
その手術に疑問を持っていた。
本当にあれは単なる術死だったのか、それとも医者の
ミスなのか、はたまたもっと積極的な理由によるもの
つまり仕組まれた殺人ではなかったのか。
そして有紀は医者を目指し、父を術死させた医者、西園の
いる病院で研修医として働いている。
そこで、あの時の術死の真相に迫ろうとしていた。
そんな時に、自動車会社の社長がやはり心臓の病で入院。
手術という事になり、有紀も立ち会うという運びに
なり、いよいよ長年の疑惑をこの目で確かめられる機会を
得たのだが、この社長の命を狙う一人の男がいた。
愛する者の命が、間接的にこの社長によって奪われてしまって
いたのだ。そしてこの男が社長の命を奪う舞台に選んだのが
入院先の病院だった。
そして男が選んだ殺害の方法は意外なものであった。

物語は二つの軸が同時進行です。
主人公の父親の術死の真相を探る点と、入院患者の命を奪おう
とする点の二つ。
途中から父親の術死を疑う理由が一つ増えるのだが、その理由は
よくありがちなパターン。
いったいどんな解決を見るのかなと思っていたが、予想通りと
いうか、これまたそこに辿りつくまでにおおよその流れがつかめて
しまいました。
やっぱりなという展開で、大きなサプライズは期待薄です。
また男が社長の命を狙う理由は、目新しい視点でのものではなくて
オーソドックスな感じ。それはそれでいいのですが、男の立てる
策がなんとも成功率の低いと思われるもので、こちらが何だか
興醒めというか、逆の意味でサプライズでした。
ただ、そうした不安定な要素を多く含んでいることによって、そこに
関わる者達の心理も揺れ動き、人物を描くという点においては功を
奏しているという気もします。
又、策が不安定なところへもって来て、この男が割りと情に動かされ
る部分があり、結局そこを突かれて、最後のとどめを刺せない辺りが
ちょっと惜しいです。難攻不落と思える策を意外な発想と行動力で
切り抜けるという展開を期待したかったが、今回はそうした展開に
ならずに、個人的には不完全燃焼という印象です。
結局、有紀の疑惑は晴れるんですけど、疑惑が晴れる過程が逆に
有紀を使命をもった医者に向かわせる展開へと流れていき、物語の
テーマとしては目的地に着陸させたかなという印象です。
そして、社長の命を狙った男も、利用した女に情に訴える説得をされ
結局は、情に脆い良いヤツで終わってしまいます。
物語としては、全ての要素に関して中途半端な印象が残りました。
結果は同じであっても、もう少し行き着くところまで行っての結果で
あったほうが、ラストが救いになったような気がしますけど、あの
展開だと盛り上がりに欠けたかなという印象が残りました。


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流星の絆 [東野圭吾]


流星の絆

流星の絆

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/03/05
  • メディア: 単行本



両親を殺害された子供3人が復讐を試みる
ミステリー小説。
東野さんらしい小説といえるかな?
両親を殺害されているという設定なのだが
小説の全体の雰囲気としは尖っていない。
子供達は両親を殺されて14年が経過した時
に復讐を実行に移そうとするのが、その
きっかけが少し安い感じがする。
復讐の相手と、自分の父親とは生前、それほど
関係が無い。いい関係にしろ、悪い関係にしろ。
簡単に言うと動機が薄いかな。
最近では以前にも比べて理由無き殺人が横行
しているからそういう意味ではそれほど不自然
ではないのかもしれないが、小説という物語
の世界の中での話しだとしたら、もう少し奥行き
のある関係が欲しかったかなと思う。
また、主人公である子供ら3人にしても両親を
殺害した犯人に対する憎しみの感情が薄いかな。
14年経過してあるきっかけから思い出したように
復讐を計画するような感じが見られる。
またその手法もぬるいかなと。
そういう復讐方法も確かにありかなとも思うけど
主人公達の心のうちの描写が薄いから余計にそんな
風に感じられます。
またラストを閉めるのに使われた登場人物も、その
時になれば、こういう使い方だったのかと思えたが
逆にそれだけの為に使われた道具的な感じがします。
いったい彼がこうして出てくるのにはそれなりの
理由が用意されているのかと、いろいろと探りながら
読み進めたわりには、結果寂しいものだったいうか
それだけ?って感じで。
結果から見ると、道具として使われた彼は必要なかった
んではと。
同じ結果を産むための道具にしても、もう少し違った
感じでの使われ方をしても良かったのではと疑問が
残りました。
さすがに、事件の真相にはサプライズを用意してくれて
はありましたが、どうも登場人物達の心情が浅く感じ
られて心を動かされるというところまでは残念ながら
到達させてもらえませんでした。
一言で言うと、軽いという印象です。
あまり重たい雰囲気のミステリーは苦手とか、食傷気味
で展開とその先に用意されているサプライズが洒落て
いるかどうかというようなところに楽しさを求める読者
には受け入れやすい物語ではないでしょうか。
復讐する相手の、仇の男に妹が惚れてしまうという設定
からどんな風に展開させ、どんな人物描写をしていくの
興味が湧きましたが、盛り上がりはもうひとつかなという
のが個人的な印象です。
帯にある「すべての東野作品を越えた現代エンタメの最高峰」
にはやっぱり疑問が残ります。もっと良い作品が過去に
あったと思うけどな。


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眠りの森 [東野圭吾]

眠りの森 (講談社文庫)

眠りの森 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1992/04
  • メディア: 文庫

高柳バレエ団にて殺人が発生。
バレエ団に忍び込んでダンサーに襲い掛かった男を
そこに居合わせた別のダンサーが鉄製の花瓶で殴打
し、男を殺してしまう。
正当防衛を主張するのだが、それを立証する為に必要な
男が忍び込んだ理由を探る加賀だが、全くといって良いほど
男とバレエ団に繋がりはなく、物盗りにも見えない。
難航する捜査の前に新たなる殺人事件が同じバレエ団で発生。
バレエマスターである梶田がゲネプロの最中に毒殺される。
不可解であった事件に続いて、殺害理由の不明な殺人
事件が続発。
バレエ団の中にも、この中に犯人がいるという雰囲気が
立ち込め、別のダンサーが梶田殺しの真犯人を探し始める
のだが、今度はこのダンサーが同じ毒によって殺害され
そうになる。
公演を前にして、次々に起こる殺人および殺人未遂事件。
高柳バレエ団という鬱蒼とした森に隠れた犯人を加賀は
どこから探り当てることが出来るのか。

物語はとても狭い範囲の中で発生。
事件性としての派手さは無く、物語の展開も淡々として
いる感じ。一回読んだだけでは後半からの加賀の推理による
展開だけが読みどころのような印象を受けるのだが、結末
を知ってから再読すると、その印象がガラリと変わってくる。
一番最初の事件の真犯人はすでに冒頭から読者の前に堂々と
姿を現しているし、真犯人を庇って警察に逮捕されたダンサー
と真犯人の関係を思うと、真犯人の心理が行間から立ち上って
くるようで、切なくも哀しい。
そして、逮捕されたダンサーの、これまでの負い目を背負っての
人生も重なって、この物語は冒頭からこれほど哀しい物語
だったのかと改めて嘆息する。
また、梶田殺害の事件はまったく別のものだと思えていた事件
も実は、その背後にある経緯は、最初の事件もこれも、また
次に発生するダンサー殺害未遂の事件も、その根幹は同じ部分
から派生している。
この根幹に関わった者がある意味では一番罪深き者でもあるのだが
自らの将来、夢の舞台の為に他人に濡れ衣を着させた業の深さには
驚きを禁じえないのだが、そうせざろう得ない世界に生きていると
思い込んでしまうところもまた哀しい。
また別の展開としては刑事加賀の恋物語としても注目のところ。
この事件に関わる前に、バレエを鑑賞する機会を得ていた加賀。
そこで観たダンサーが実は高柳バレエ団の一人のダンサーだった。
このダンサーも事件に深く関わっていくのだが、ひとりの女性として
も加賀が惹かれていく。
事件の真相に迫っていく程に彼女の影もまた事件の中に見え隠れして、
加賀の心情に影を落とし、その陰影を深めていく。
事件発生から解決に至るまでの過程の中で、幾つか埋め込まれたヒント
を手掛かりに、読みながらどこまで真相に迫れるか。
そして、この物語に登場する加賀刑事。実はシリーズものとして、いくつかの
物語にも登場。刑事になる前には学校の教師をしていたという経歴
を持つ。若いながらもその着眼点は鋭く人を見抜く力も優れている。
心の機微にも敏感であり、厳しいだけではない情をも持ち合わせている。
この物語で加賀が登場するのは2作目。これから加賀がどのように
人として深みを増していくのかを読むのも楽しみの一つかもしれない。


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嘘をもうひとつだけ [東野圭吾]

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/02
  • メディア: 文庫

ミステリーの短編集です。
短編というだけあって削れる部分は
可能な限り削ってありどれもあっさり
している感じです。
しかしシンプルでありながらも、登場人物
たちは物語の中でしっかりとその存在感が
あって読み手を引き込んでくれます。
なかでも、どの物語にも登場する刑事、加賀ですが、
彼が良いです。非常に優秀でありながら赤い血が
通った側面をもっており、魅力的に描かれてます。
加賀刑事は東野さんの他の作品にも登場しており
シリーズものとなっていて、この作品もそのシリーズ
を構成するひとつです。
又、犯人像にも人としての厚みを持たせていています。
ミステリーでありながらも、読み方によっては
事件の謎、仕掛けよりもこちらのほうが魅力的に感じる
読者も多いのではと感じたりします。
で、どの物語も比較的早い段階で犯人像を
うっすらと影のように描いています。
犯人と被害者の人間関係に共通性があるところ
からも犯人像を読み手に優しく提示してくれていて
います。
とても読みやすくてさらっと読める感じで、
構えることのない気軽さが良いです。

これらの物語は「嘘」というひとつのテーマ
に沿って描かれているようです。

事件の加害者もしくは被害者が事件の核心に触れられる
事を避けるため用意した嘘を刑事加賀がはがしていきます。
はがれそうになった嘘にさらに嘘をかぶせようとする
者たちと加賀のやりとりが物語全体を通しての軸です。
その嘘の中にある悲哀が物語を引き締めています。
過去の輝きを守ろうとする者、息子を失うこととなった
過失を覆い隠そうとする者、未来の輝きを守ろうとする
者、呪縛から逃れようとする者、失った愛を埋めるもう
ひとつの愛に生きようとする者。
個人的には最終話の「友の助言」が良かったかなと。
謎解きの中で少しだけ触れられる息子。
母親の新しい愛の生活の中で彼はどういうように成長して
いくのだろうかと、先を読みたい読後感を残しました。


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宿命 [東野圭吾]

宿命

宿命

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1993/07
  • メディア: 文庫

物語の幅としてはそれほど大きくなくて
コンパクトにまとまったという感がする
作品ではないかと思います。
物語の導入からラストまで、流れが大きく
うねりながら、思わぬ支流を増やしながら
力強い噴流となって読者に迫ってくるという
感じではなく、発生した事件に絡む人物たち
が限られた範囲に早い段階から限定されており
意識があちこちに飛んで、読みながら混乱を
きたすような事はありません。
それ故か、事件の背後にある主人公が背負って
しまった人生の宿命の大きさと、その哀しみが
より大きなものとして感じられましたね。
主人公の勇作は警察官の父を持つ少年。聡明で
あり、人望もありクラスのリーダー的存在。
だが、彼がどうしても勝てない相手、晃彦がいた。
晃彦は彼とは対照的な性格で、人の和に溶け込む
事を嫌い我が道を淡々と行く。だが学業やスポーツ
では誰も晃彦に勝るものなど居なかった。
この二人は不思議な因縁めいた関係が続きそれは
高校を卒業するまで続く。二人は同じ大学を
目指しながらも、勇作は家庭の事情で無念にも
大学を諦めて父と同じ職に就く。一方晃彦は当然の
如く大学生活を送り、自分の目標に向かって着実に
歩を進めていく。この二人がある事件を軸にして
再び対峙する事となる。
この事件は遠い過去の暗い影を引きずっており、表面
上の事件と、過去の事件の双方の謎を解くという展開
で流れていく。
晃彦との再びの対決自体も勇作にとっては、自分の人生を呪いたくなる
ようなものであるのだが、実はそれ以上に自分の人生、
背負ってしまった宿命の重さに耐えながらそれを当然のようにして
生きてきた晃彦の悲哀に、この物語の核心がある。
核心に触れたときに、単純に勇作と晃彦の勝ち負けの
話ではない、哀しみに引きずり込まれていきます。
二人の人生を翻弄する原因を作り出した、倫理を蹂躙した
欲望に、社会を汚していく根幹が腐臭を伴って現れたような
気分になった。
いつの世も、社会に暗い影を落としていくのは、心無い醜い
大人達なんだと。
そして、事件の真相を共有した勇作と晃彦はこれから先、どのような
人生を歩んでいくのかが気になりました。

 


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殺人の門 [東野圭吾]

殺人の門

殺人の門

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 文庫
主人公和幸の家は父親が歯医者を営む裕福な家庭であった
が和幸が子供の頃に祖母が他界するが、この死に不審な噂
が流れ、警察沙汰になった頃、父親は女にたぶらかされて
金を毟り取られ家庭は崩壊、和幸ともども貧しい生活へと
転落していた。
和幸の小学生時代の同級生の倉持の家は豆腐屋を営み、生活
は常に裕福ではない生活。地味な家業に嫌気が差していた
倉持は常に大きく金をもうけることを考える少年だった。
二人の境遇には大きな差があり、倉持は密かに和幸の境遇と
自分の境遇の違いに捩れた妬みを持ち続けていた。
そして和幸の生活が暗転する事を望み続ける男だった。
物語はこの二人の絡みで進んでいくのだが、和幸はあらゆる
局面で倉持に騙され続け、人生を暗転させられる。
事ある毎に倉持に対して殺意を抱くのだが、それを実行する
一歩手前で倉持にはぐらかされて殺意を萎えさせてしまう。
物語はこの繰り返しによって殺意の膨張と収縮を繰り返し
同じような内容が何層にも重なっているような感じ。
こうした事を繰り返し読みながら、和幸はいったいどうしたい
のだろうという疑問が湧いてくる。本当に倉持を殺害したいのか?
何回も騙されながらも、つい倉持が持ちかける話に乗って
自分までもが詐欺の片棒を担がされていたりと。
自分でも倉持の言葉には必ず悪意があると判っていながらも
憎悪も殺意も空気が抜けたように収縮させてしまう和幸に苛立ち
に似た情けなさを感じさせるほど。
いい加減、奴とは縁を切るだろう、ここまで騙されたらと言いたく
なるほどに。そして殺意はどこへ行ってしまったのかと。
殺意を膨張させながらそれを実行出来ずにいる和幸。殺意を実際の
形あるものにする、殺人を犯すためのあと一歩が足りないと感じる
和幸。
そして、自分の殺意の膨張と収縮を繰り返しているうちに、かつて
倉持の片棒を担いで詐欺を行ったことによる腹いせに自分の命が
危険にさらされるはめに。
何度も何度も騙され、人生を暗転させてきた倉持を殺すことが
出来ずにいる自分よりも、たった一度自分が行った詐欺で自分の
命を奪おうとする相手の殺意のほうが強かったことに愕然とする。
この違いは何なのかと自問する。
殺意の源は憎悪であったり、闇のような悲しみであったりするが
殺意が殺人にまで化けるには、殺人の門をくぐるにはそこに条件が
必要なんだと。そしてそれは自らの意思の下ではないところで
成立するものだとしたら、殺人を犯してしまった直接の理由は
それを犯してしまった本人にも判らないものなのだろうか。
物語の結末がそれを雄弁に語っている。
和幸の最後の殺意の爆発によって。

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夜明けの街で [東野圭吾]

夜明けの街で

夜明けの街で

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本

主人公渡辺はどこにでもいる平凡な
サラリーマン。生活は安定していて
会社は一部上場企業、幼稚園に通う
娘と妻の3人家族。平穏を絵にした
ような家庭の中で日常を送っていた。
そんな中、一人の女性が派遣社員として
渡部の部署に派遣されてくるのだが、
この女性と不倫の関係に陥ってしまう。
不倫を完全否定していたにも関わらず
自らの事になると冷静さを失いながら
沼に嵌まり込んでいくように堕ちていく。
しかし、この女性はある時効を目前に
控えた殺人事件の容疑者でもあった。
彼女との関係がすでに後へは引けない状況
になった時に、この事実を突きつけられ
戸惑うばかりの渡部。
彼女との関係が、家庭という砦をも崩壊
させる流れの中で、自らの弱さと狡さに
悩む様や、それと同時に殺人事件の容疑者の
真偽に、振り子のように揺れる渡部の心情が
よく描かれています。
不倫関係の彼女の描写にも引き込まれていきます。
自分の夫が不倫したらという同僚の問いかけに
「殺します」と物騒な事を軽々と口にしながらも
自ら不倫の当事者となり、殺人事件の容疑者で
ありながらも、その核心を渡部には濁したままの
態度を取り続け、渡部の心中を察したような言動に
悪女の印象すら、読み進めながら持たせてしまう
作者の描写の上手さはさすがです。
そして、渡部の不倫の流れが深くなっていくことを
危惧しながらも、手をかしてしまう新谷も脇を固める
いいキャラで登場しています。
そして、この新谷が最後に、東野さんの今までの小説
とはちょっと違った形で再び登場するのですが、
これが新鮮でしたね。
渡部が少しずつ不倫を深めながら彼女との逢瀬を重ねる
のだが、その流れが大胆になるのと同時に家庭との
バランスが危うくなっていき、いつ破綻してしまうのか
という緊張感と、殺人事件の犯人に少しずつ近づいていく
展開は頁を捲る手を止めさせません。
そして時効の時を迎えた時の場面では、ミステリーらしい
真相に再びやられたという気分にさせられました。
そして、この後に控えていた渡部と彼女との結末。
物語を読み進めていくうちに芽生えた彼女への印象が
この結末をもって変わったような気がしたが、それとは
別の意味で彼女の強かさを見せ付けられ、男の弱さと狡さ
を利用する女の強かさには恐れ入りました。
そして、人の道に外れた男女の恋物語は物語にすればドラマ
チックではあるかもしれないが、多くのものを傷つけ、崩壊させ
時には人の命をも奪ってしまう修羅場が待っており不倫が文化
などとは軽くコメント出来ないドロリとした暗さを改めて
見せられました。


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白夜行 [東野圭吾]

白夜行

白夜行

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 文庫

「白夜行」の続編の「幻夜」を先に読んでいたので
先の作品はどんな流れなのか楽しみにしていた。
「幻夜」も散在していたパズルが終盤にかけて
然るべき場所に収まっていくような物語としての
精巧さに驚いていたのだが、この「白夜行」は
さらにその上をいく精巧さだと言えるような気が
する。まるで精密機械のような緻密さに作者の
力量を改めて思い知らされた。
物語の前半から中盤にかけては、精密機械の部品を
散りばめたように、これらの話がどこへ行き着くのか
と思わせる。部品の点数も多くこれらを整理して
頭の中に収納するのに気を使いながら読み進めた感じです。
「幻夜」では美冬に弱い部分を握られ、愛するが故に
その人生を狂わせ、魂をつぶしてしまった雅也。
この構図はすでに物語の早い段階から読者に見せて
いたが「白夜行」ではこの構図がラストまで想像の領域
を出ない構成。主人公の雪穂と亮司は19年前の事件を
きっかけに、人生の夜、闇を抱えて生きていくことに
なる。だが物語の中では雪穂と亮司が直接言葉を交わす
事はなく、次々と起こる事件に二人の影が見えるという
形で流れていく。
これらの事件の計画は雪穂の計画の下に亮司が手を下して
いたようで、この辺りは「幻夜」と同じ展開だが、二人
の接触が無いので読者の想像を喚起させている。
また、三人称でありながらも、雪穂の心理描写はされて
いない。あくまでも会話とその立ち振る舞いから雪穂の
姿、人間像を創りだしている。
「幻夜」とは違った形だが、個人的にはこうした描写も
読者を引き込んでいく上でとても効果的なように感じました。
19年前に主人公の身に降りかかった事件。まだ少女だった
彼女はすでにこの時から太陽を無くし、人生の夜を歩く
運命を背負わされていた。
あらゆる手を使い、人生の成功をその手に収めていく様は
怖さを感じずには居られないのだが、その胸中はいつも
太陽の陽が降り注ぐことは無かった。彼女はいったいどこへ
行こうとしているのか。どこまで行けば彼女を満たすことが
出来るのか。共に夜の闇の中を歩いてきた亮司を失った時の
彼女の後姿に人生を生きていくうえでの覚悟と諦念と哀切が
白い影となって張り付いているようであった。


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幻夜 [東野圭吾]

幻夜

幻夜

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫

阪神大震災の直後に、借金の返済を迫っていた叔父を
殺してしまう雅也。この模様を目撃してしまった美冬。
大震災という状況の中で人の死があちこちに溢れて
いた中では、人の死は決して珍しくなくこの殺人も
警察の前では震災での死者の一人として処理された。
美冬は雅也を警察に突き出すことをせずに、自分と
一緒に震災の地から東京を目指すことを雅也に持ちかける。
殺人の現場を目撃した美冬からの誘いを断れず、また
自分もこの地にいても将来は悲観的だった事を考え雅也は
美冬と共に東京へと向かった。
東京に出てきてからの美冬は着実に、自分の描いた将来像へ
向かって歩き始める。
しかし、それは美冬が企てた恐ろしい計画によるものだった。
殺人を目撃された弱みがきっかけだったが、共に東京に
出てきた雅也は美冬に溺れ、自分自身の命運を握られ、彼女の
描いたシナリオを現実のものとする為に、あらゆる工作を
重ねていく。
美冬の、自分の成功にかける執念の凄まじさには気味を悪さを
感じさせる。
目的のためには他人を利用し、利用価値がなくなればゴミのように
切捨て、騙し、傷つけ、時にはその命さえも奪う残酷さは
読みながら薄ら寒いものを感じずには居られないほど。
この印象が全般を包み込んでいる。
不倫、ストーカー、暴行、盗難、殺人という犯罪のパレード。
どれもが緻密に企てられ、それを実行させていく様や
利用出来る者を取り込む術や相手の弱みを掴んで操る様に
この美冬の強かさに恐れを感じるほど。
だがその一方で、雅也の弱さが美冬の強さの裏側のように
見えてくる。
弱みを握られた上で、彼女に溺れていき、心を、魂を抜かれて
いく様が対照的に描写されている。
こうした対照的な二人の描写の巧さに作者の力量を改めて
思い知らされました。
また、美冬の美に対しての姿勢や彼女自身の思い描く幸せや人生観
と対照的な人生観を持つ雅也に、少なからず今の世相が大きく
ダブって感じられたのは私だけだろうか。
この物語のような具体的な現実は自分の身の回りには存在して
いないが、美冬の価値観の底流にあるものは、身近で感じるものと
たいして変わらないものだと思うと、少しだけ構えてしまう事を
禁じえない。
それにしても、作者の物語の中に謎を埋め込む手法も流石です。
何層にもなった謎が読者を物語から遠ざけないです。
ボリュームのある頁数の割には苦もなく読めて、その流れはまったく
破綻なく流れていく。
もし注文をつけるところがあるとすれば、ラストが少しだけぼやけて
しまった気がします。
あっけなさと、最大の謎である美冬の過去。そしてこれから先の
美冬がどう変わっていくかがもう少し欲しかったような気がします。

 


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さまよう刃 [東野圭吾]

さまよう刃

さまよう刃

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 単行本

この手の物語はいつ読んでも胸苦しさが
ついてまわるって感じです。
物語は、15歳になる少女がやはり未成年の
少年達に蹂躙され、結果として殺害されてしまう。
被害者の少女の父親はその事実を知り狂おしい
程の悲しみの中で、密告された情報を元に彼らに
復讐をするという流れ。
被害者の父である長峰が、密告を受けたことから
犯罪者の行動を確認しようとするが、偶発的に鉢合わせ
した事から、犯罪者を殺害してしまう。
だが、長峰はこれで胸の裡の憎悪を鎮めることは出来ずに
もう一人の犯罪者を追い始めるが、この事件の発生と同時に
警察も動き出し、犯罪者に辿りつくのは、長峰が先か、
警察が先かという展開で進んでいく。
そして長峰と犯罪者は対峙するのだが、ここでのシーンは
思ったよりもあっさりと事が解決してしまう。
少し拍子抜けの部分もあるが、ラストでの意外な結末に
読者は少しばかり裏切られる。
先に書いた 刑事も神ではない の答えを作者はここに
用意していた。
物語としては、こうした題材はよくあるものだと
思うのだが、今回読んでみてまるでノンフィクション
を読んでいるような印象を受けるほどにリアリティを
感じてしまった。
昨今繰り返される鬼畜のような犯罪猟奇的な殺人事件。
それらが重複して文字を追いながら像を描きだしてしまう。
犯人グループが未成年という事もあり、逮捕されても
罪としては比較的軽く現刑法では彼らを裁くのでは
なく、彼らを更正させることを目的としている以上
こうした事件後の流れとしては仕方の無いことであり
また法の限界とでも言えるのだろう。
しかし、そこには被害を受けるもの、受けた者に対する
感情が盛り込まれてはいない。
人としての尊厳を奪い、人としての扱いを受けない犯罪
に対して、加害者だけが法によって守られる。
世間の目から隔離され、高い壁に遮られ保護されある
一定期間を大人しく過ごした獣たちが再びその牙に
穢れた涎を垂らしながら無防備な人々の群れの中に
放たれる。
こうした被害者の心情が法の前では無力という意味に
おいては、刑法第39条や少年法は特に顕著であるように
感じられる。
また裁判に関してもやはり被害者にとっては大した意味は
持たないのかもという気になってくる。
勝ち負けで争われ、大切な命を奪われたものにとって、
それが返ってくるわけでもなく、社会的にひとつの事件に
対して区切りをつけるだけであると。
犯罪者が刑に服して更正するかどうかなど被害者にしてみれば
関係無いのかもしれない。
警察というものもあるが、こうした犯罪を未然に防ぐという
意味に関しては、殆ど無力であるのかという思いも
物語を通じて突きつけられてくる。
後処理はできるが、それ以前の段階では動くことは難しく
現状では法的にも物理的にも難しい。
先に読んだ「名もなき毒」で作者が登場人物の口を借りて
語る心情にもそうした部分が伺える。

どこに至って怖いものや汚いものには遭遇する。それが
生きることだと。

こうして見ると自分の生きている社会の中でいかに自分が
丸裸で身を守る術を持たないかという思いを強くしてしまう。
嘗て、江戸の世では仇討ちという名の成敗が許されていたのだが
現在の法治国家では認められていない。
犯罪を犯したものを取り締まる刑事らの間にもこうした情に
揺れる者も現れる様を描いている。刑事であって、神ではないと。
職務は遂行するが、その心情は複雑であると。

陽の当る穏やかな暮らしが明日には地獄の底へと突き落とされる
かもしれない危うい社会。犯罪者によって大事なものを
奪われ、そしてまた自分の人生をもまた奪われるかもしれない。
人の裡の中で荒れ狂う憎悪と、法との狭間で揺れる
心理描写を描いた作品。読みながらも痛みを伴うがページを
捲るスピードを緩めることが出来ずに作中に引き込まれていきます。

 


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