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ジェミニの方舟 東京大洪水 [本]


ジェミニの方舟―東京大洪水

ジェミニの方舟―東京大洪水

  • 作者: 高嶋 哲夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本


「M8」の災害小説のシリーズ3作目となる完結編。
「M8」は東京を直下型の巨大地震が襲うという設定
だったが、この「ジェミニの方舟」は巨大台風が
東京に上陸するという設定。
今年の夏はゲリラ雨で被害が出たところもあって
雨での災害という意味では強い印象が残っている。
毎年台風がやってくるという面においても、身近な
設定になっている。
「M8」で取り上げられた巨大地震も東海地方に住む
人にとっては身に迫るものだが、長い期間来ると言われ
続けて未だに発生していないという現状からみると
「ジェミニの方舟」の台風による災害のほうがより
身近に感じられる。
物語の内容としては「M8」の時と展開はほぼ同じ。
気象屋の玉城は二つの台風が合体して今まで経験
した事のない巨大台風が日本の首都、東京に上陸
するというコンピュータシミュレーションが弾き
だされた結果を社会にフィードバックしようとするが
気象庁も都知事も区の役人も信用しようとしない。
この結果を得る前に「荒川防災研究」という論文を
まとめていた。その内容は荒川と隅田川の地勢、地質、
水量、水流をあわせて決壊の可能性のある危険箇所、
洪水の広がり方をシミュレーションしている。
氾濫した場合は東京駅を中心に都心の三分の一が冠水、
地下鉄は水没して、地下街にまで水が溢れて来ると
している。
この論文は発表を目の前に関係者に配布されており
それなりの反応を感じてはいたのだが、この荒川防災
研究と同じ結果をもたらすと思われる巨大台風が発生
した今は、逆に関係者は目をそらそうとしている。
又、玉城の妻である恵子は一級建築士であり、数年に
わたるプロジェクトのタワーマンションの完成を目の前
にしていた。このマンションの建設の責任者である
恵子の上司も「荒川防災研究」に目を通しており、
完成を前に玉城からマンションの安全性についてコメント
を求めたのだが、玉城の口から出る言葉に不安と
焦燥感を強めていくのだが、ここへ来て工事の停滞は
会社への多大な損失を招く結果となる為、恵子の設計を
信じて工事を進めていく。
こうして多くのものが、巨大台風に対して楽観視して
いるなか、玉城は不安を募らせながらコンピュータから
はじき出されるシミュレーション結果を見つめていた。
そしてそれは、現実のものとして最悪の結果をもたらす
事となってしまう。

「M8」は巨大地震でその破壊力は凄まじいの一言に尽きる
が、物語の描写として破壊力の恐怖感というか身に迫る
臨場感は正直強烈ではなかった。それぞれの災害箇所の
描写はあるのだが、そこにあるのは災害後の描写と人々
の疲れた姿であり、災害が発生しているその時の描写が
割と薄い。一瞬ですべてを破壊する地震というものの性質
から、こうした描写になっていると思われる。
だが「ジェミニの方舟」の巨大台風による災害では時系列
を追ってじわりじわりと災害の被害が大きくなり、それに
対応しようとする人々の姿がじっくりと濃く描写されており
緊迫感を伴って読者に迫ってくる感じがします。
政治家や役人はかつて経験した事のない災害の前に対処の
方法に苦悩し、玉城を含め災害に体を張って対処しようと
する自衛隊の隊員。又玉城の家族も圧倒的な自然の力の前に
叩きのめされそうになりながらも、必死に立ち向かおうと
する姿はリアリティがあります。
妻である恵子は自身の設計したマンションで倒壊を免れる
ために、現場作業員とともに強烈な風雨の中で出来る全て
の対応をします。
夢の第一歩としたこのマンション建設のために、ろくに家庭を
も顧みず、子供の面倒も親に押し付けており、そんな姿に
苛立ちすらも感じたが、この災害の中でロープを握り、工具を
握り、更には重機をも運転して、文字通り体を張った姿に声援
を送りたくなりました。
又玉城と恵子の子供である大輔も災害の中で、必死に台風に
立ち向かう姿に、ひやひやしながらも頑張れと声を掛けたく
なります。
こうして巨大台風が過ぎ去った後は、「M8」の時と同様に
政治家たちの反省の弁があります。現実問題としてもこれくらい
の構えがあって欲しいものだと思いますが、実際とところは
どれくらいの準備が出来ているのか気になるところです。
物語は台風が過ぎ去った後は、本当にあっという間に幕を
下ろすのですが最後に、玉城の家族が雨降って地固まるように
平常を取り戻してくれたのが良かったです。
リラックスして楽しめるという感じではありませんが、物語
の中に埋没して、ページを捲るスピードが落ちない物語です。



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コメント 2

yuka

今年は"台風直撃"は無かったけど
ゲリラ豪雨は多かったですねー!
車で数十分で行ける近くの市が
水没して大変な事になってたり・・・。

最近の地球は
「この先どうなっちゃうの?」って感じですし。
小説の中だけの作り話だけでは済まない気がしますね (´‐ω‐`)
by yuka (2008-11-03 15:28) 

joker

yukaさん。

そうですね、今年はゲリラ豪雨が多かったですね。
何でこんなにっていうくらいに。
天気予報も予報を出すのが難しいらしですね。
突然のことなので、外出しているときにやられると
対処の仕方に困りますよね。

本当に、地球温暖化による環境問題も含めて
地球がどんな風に表情を変えていくのが不安ですね。
今の僕らよりもこの後の世代のほうが、より一層
厳しくなることを考えると、不安でなりません。
小説ではありますけど、決してその中だけで終わらない
現実感を伴う怖さを強く感じた作品でした。

by joker (2008-11-05 23:30) 

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