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悪人


悪人

悪人

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2007/04/06
  • メディア: 単行本


舞台は九州。恋人と呼べる相手のいない男と女が
出会い系サイトで出会い物語は進んでいく。
一時期世間を賑わせた、出会い系サイトが絡んだ
男女間のトラブルから殺人という流れがこの物語にも
軸となっている。
なんだか安直というか安っぽい物語なのかなという
印象を持ったが、登場人物達の描写にページを割いている。
主人公の祐一は先にサイトで出会った佳乃を殺害して
しまい、その後に出会った光代と逃亡を続けていくのだが
殺害をした後からの二人を軸にした登場人物達のそれぞれの
視点からの描写が濃くなっていきます。
悪人というタイトルからすると、冷酷で非情な犯人像を
自分の中で作ってしまいがちですが、そういう印象はこの物語
の中では薄いかな。
佳乃を殺害して光代と逃亡をしている時点で悪人ではあるが
それ以外の部分での祐一は、心優しい青年とも感じられる。
そう思うと悪人、悪というのにもいろんな顔があるという事を
感じさせてくれる。心魂が根っから悪というよりも善でありながら
そこにある弱さが彼を悪にさせてしまったというように描かれて
いる。悪というものに対する作者から読者への問いかけが感じられる
んですけど、そうした意図があったなら祐一という人物像をもっと
厚く描いたほうがよりこうした対比の構図が生きてきたんではと
思いました。光代と出会って逃亡をするが、物語の前半の部分で
もっと祐一の善の部分も含めてページを割いたほうがより楽しめた
ような気がしました。
それと光代が彼と逃亡をして行くんだけど、今ひとつその行動に
素直にうなずけないんです。
彼と今離れてしまったら自分の幸せがなくなってしまうと。
30歳を目前に控えた女性の焦燥感や悲哀も判る気がしますけど
出会い系サイトで出会ってそれほど時間を重ねていない段階で
殺人を犯した男と逃亡するというのが少し疑問かな。
それも祐一に強引にというのではなく、逆に光代から一緒に逃げて
くれという流れ。こうした流れにするのなら、そうした心模様に
いたる流れをもっと厚く描いてくれたほうが、もっともっと読みながら
心の振幅の大きな物語になったんではないかなと感じましたね。
だから少しその点がもう少し頑張って欲しかったかなと。
ただ、だから面白くなかったかというとそんな事はなく結局のところは
楽しんだんですけどね。
でもこれは人によって好みが分かれるかも知れませんね。
これだけ描かれていれば、充分だし、祐一と共に逃亡を続けようとする
女心に共感出来るから、今以上に厚くしたらくどいだけになってしまう
とか。
でも、作者のこの物語の底流に流した悪人と善人という線引きの難しさという
か意味の無さというのは伝わってきました。
それと印象に残った台詞ですけど、佳乃の父親の言葉がありました。
「その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人」
「おらん人間が多すぎるよ」
「失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある
人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を馬鹿にした
目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」
物語の中では、佳乃を殺害に到る間接的な道を造りながら、佳乃もその父親
をも嘲笑う若者に対しての言葉だけど、今の時代を象徴しているなと感じました。


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