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龍時01-02 [野沢尚]


龍時01‐02

龍時01‐02




野沢さんのスポーツものの小説はこれが唯一
という事になるのかな。
野沢さん自身のサッカーに対するスタンスと
いうのは、私自身には判らないが細かい所まで
書かれているという印象を受けます。
どんなスポーツにも動きというものがあって
その描写には専門的な要素を避けては通れない
と思うのですが、この作品はそういう意味でも
手を抜くことなく描写されているなという印象。
で、あとがきを読むと元jリーガーのサポート
あったとあり、やっぱりなと思ったが、それを
差し引いても良く描かれていると思います。
そしてそれ以上に主人公の描写には情熱を注いで
いるなと感じます。この辺りが野沢さんらしいと
ころかなと。
そしてこの主人公であるリュウジのキャラは読み
進んでいって、読み終わった頃には際立った姿で
読者の胸の中に像を残すのでは無いかなと感じます。
スペインとの対戦でゴールを挙げながらも敗北を
喫し、自分の置かれている環境の甘さを痛感、と
同時に日本のサッカーの甘さを突きつけられる。
やがて単身スペインへ渡るのだが、スペイン行きを
反対する母との葛藤、スペインでの孤独と疎外感。
そんな中でも少しずつ芽生える友情。
だが、上を目指すためには友とも戦うことになり
そこでの事故に胸を痛め悩みながら、それでも前へ
進むことから目をそらさないひたむきさ。
自らの力を信じながらも、自分の弱さを断ち性急なまで
に結果を求め、親を捨て国を捨てようとする。
現実の厳しさの中で、夢というエンジンに10代の
危ういとさえ感じる情熱を注ぎ込んで命を削るように
走る姿は胸を打ちます。
そして各所で語られる台詞がまた印象的。
父親がまだ10歳にもならないリュウジに語る台詞。
「男というものは魂の隠し場所を持っていなきゃいけない」
また国籍を捨てスペイン人になろうとして、養子を
お願いしたときに語られた台詞。
「国を捨てるという事は魂を捨てるってことだ」
その言葉を受け、父を捨てようとするときの台詞。
「狭まってくる外国人登録枠のせいで気化するんじゃない。
俺、この土地で0歳の俺になるんだ。これから歩き方を覚えて
立ち方を覚えて、親も兄弟も帰れる国もない、そういう
寂しさを受け止めて、俺は自分一人の手で、俺っていう赤ん坊
を育てるんだ」
国を飛び出し、異国の地で生まれ変る決意をするリュウジ。
この物語にはサッカーを通して一人の少年が自らの足で
自らの人生を歩いていく過程での成長の姿を描いた作品と
言えると思う。
失敗することを恐れて小さくまとまって欲しくないという想いと
自分の人生の良し悪しは自分で背負わなければいけない。
苦しい環境に置かれていても、どう生きるかは自分で決める事
であって、他人のせいにしてはならない。
そんな想いが野沢さんにあったのかなと、感じます。
華やかに見える姿の裏側にある、孤独、寂寥、葛藤、挫折、悩み
苦しみを描くことで、主人公リュウジに人としての肉と血を与え
てリアリティを生み出しているところが、安っぽくなくて好感が
持てます。
又、スペインのクラブが誕生した経緯、歴史にもふれられていて
日本のクラブとスペインのクラブの根本的な違いが語られていて
スポーツでありながらも、それだけで終わらないのがスペインの
サッカーなんだと、素人の僕なんかには素直に思えてきます。
そうした背景、歴史からみても日本のサッカーがゲームに過ぎない
という印象を受けます。
ドーハの悲劇の後に書かれたこの物語にはもうひとつ、野沢さん
なりの今の日本のサッカーに対する批判も含まれていたのかなと
も思いました。本格的で情熱的なサッカーの小説を描いて、多少
なりとも関係者が手にしてくれる事も狙いのひとつだったのでは
と思いましたが、それは考えすぎでしょうか。
まぁ、それくらいの温度を感じさせる作品だと言えます。
さて、続編の龍時02-03ではどんなリュウジに成長しているのか。
今から楽しみです。


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Sho

スポーツものは全く駄目なのですが、記事を拝読しながら
なるほどそういう小説だったのか、と思っていました。
台詞のうまさはさすがですね。
そして、その台詞の深さがね― 野沢さんだなあ、と思います。
by Sho (2008-05-14 19:10) 

joker

Shoさん。

この物語は3部での構成になっています。
記事のものは第1部ですので、これから先
どのような展開になっていくのかが楽しみです。

台詞に関しては、本当にさすがだなと思います。
深いんですよね。物語の流れからこれらの台詞を
読むと本当にそう感じさせられます。

野沢様。
niceありがとうございます。
いつもご訪問いただきありがとうございます。

by joker (2008-05-15 12:27) 

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