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ラストソング 再び [野沢尚]

パンフレット(webサイズ).JPG

「ふたたびの恋」で初めて野沢さんの作品に触れてから
今日まで幾つかの小説を読ませて頂きましたが、残念ながら
野沢さんの手がけた作品で映像として鑑賞したものはテレビドラマの
「眠れる森」だけでした。
「ふたたびの恋」を手にした時にはこのドラマを野沢さんが手がけて
いたという事も知らなかったくらいで、自分の中ではこれまで未知数の
作家さんでした。
しかし、次々と作品を読むうちに野沢さんの小説の世界に引き寄せられて
いったような気がします。
どの作品もすぐに物語の中に引き込まれていくのですが、どの作品を読んで
みても活字を目で追いながらも自分の中で物語が映像となって形になって
いくのを不思議と感じていました。
ただ、これらの作品を実際の映像として、フィルムとなってスクリーンに
映し出されたらどうなんだろうか。どれくらい小説の雰囲気を残してくれる
だろうかという不安もありあえて映像としての野沢さんの作品は見ておりません
でした。
小説を原作とした映画も幾つか観てきましたが、そのどれもが小説で感じた
感動を別の色で塗り替えられてしまい、正直その手の作品は2時間という時間の
中に押し込められた、原作と同じタイトルを持つ全くの別作品という観念が自分
の中に沈殿しており、それをまたかき回して汚してしまうのはすべきでは無いと
思っていました。小説は小説であろうと。映像はまた別物だと。
ただし、野沢さんは脚本家でもあるわけで、その作品を見ないで勝手な自分の
中の観念の中に沈めては失礼かなとの想いもあり、やはり一度は見てみたいなと
想い始めていた時に、野沢さんのブログで上映会を行うとの発表があり、今回の
上映会に参加させて頂く事となりました。
天気予報では昨日から雨の予報。しかも強く降るとの事。少し気をもんだのですが
幸いにも雨に降られずに無事に東宝の撮影所に到着。
特別な計らいで東宝の撮影所の中の試写室での鑑賞でした。僕にとっては貴重な
一日だったと思います。このような機会はそうめったにありませんから。
中に入っての第一の印象は、試写室というだけあって小じんまりしているかなと。
でも、座り心地も悪くない座席に満足しながら上映の時も待っていました。
そして上映が始まってからの2時間。スクリーンに映し出される役者さん達の血の通った
演技に圧倒されていました。
最初から最後までとても濃密な時間だったと思います。底の透けて見えるようなところ
が無かったなと。
20代前半、夢を見てひらすら前に進むことだけを願っていた修吉、一矢、バンドの
メンバーと、倫子。
映画の冒頭に倫子が語る、アナログレコードに針が落ちていた頃、青春も音楽もあの
塩化ビニルのドーナツ盤のように傷つきやすかったという言葉のように、成功と挫折の
中で友情と裏切りがありその中で様々な感情が渦巻き、一言では表現できない感情に
自身が翻弄されてしまう様がとても厚く伝わってきました。
迷い、戸惑い、寂寥、哀しみ、悦び、温もり、挫折、孤独、情熱、愛情という感情の
狭間の中でもがき苦しみながら生きる様が生々しかったなと。
小説の中でも印象的だった倫子の言葉が映像の中でも同じように印象的でした。
誰かのために生きるような時代は自分の足で通り抜けなければいけない。
相手を想うあまり自分の道に踏み出せない修吉と一矢。同じ夢を追っていても現実
を前にして互いに進むべき道が別々にあると知りながらも相手を自分の人生から切り
離して生きていく痛みと切なさの前に踏み切れない様に、心を鷲づかみにされたように
観ながら切なさがこみ上げてきましたね。
でも、この感情は、この映画が当時封切りされた時には今と同じようには感じられなかった
かもしれないなとも同時に感じました。
おそらく、修吉や一矢と同じ年頃だった筈。この頃に観たのでは分からないことが多かった
んではないかなとも思いました。年齢を重ねてきた今観たからこそ分かる痛みというもの
が胸の中に広がりました。
そういう意味では公開から十数年たった今だからこそ、改めて観る価値のある映画だと
言える作品なのかなとも思います。公開当時は興行成績はそれほどでも無かったという
お話をして頂きましたが、今観てみたらすごくいい映画ではないかと思いました。
映画の価値は確かにお仕事としている方々には数字という結果は大きな意味を持ちます
が、観る者それぞれの中で価値観は違うものであって、大きなヒットがなかったとしても
人それぞれに受け取り方があって、僕にとっては素敵な作品である事は間違いないです。
活字で創りだす物語である小説と、映像で観るものに訴えかける映画との間のギャップに
原作のある映画に良いものはないと今日まで思っていましたが、決してそんな事はないなと
考えを改めました。
小説で感じたものに、映像を加えたことによって更に熱を帯びて、「ラストソング」は
より一層僕の中では素晴らしい作品という位置づけになりました。
野沢さんがご健在でしたら、このような企画は逆に無かったのかもしれないのかなとも
思うのですが、観る者の悦びを野沢さんに伝えられたらなと思いました。
また、上映後の瀬田様のお話しも貴重なもので、嬉しかったです。
こうした機会でしか聞くことの出来ないものばかりでしたから。
ファンにとってはこうした上映会は本当に意味のある特別なものです。
一般公開ではない、作品を愛する人達だけに機会を設けて、眠っている作品に改めて
息吹を与えられる素晴らしい企画だと思います。
ご苦労もあるでしょうし、大変なのは承知の上ですが、この企画が回を重ねて頂ける
事を願っております。
野沢様をはじめ、多くの関係者の方々、本当に今回はありがとうございました。

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コメント 6

野沢

今回は上映会にご参加いただきありがとうございました。
小説と映像の違いをどの様に感じるのか心配していましたが記事を読んでホッとしました^^
映画の伝えたいメッセージは今も鮮やかで色あせることなく皆さまへ届いたのだと思うととても嬉しいです。
次回の上映会もお楽しみに^^
by 野沢 (2008-04-20 09:07) 

joker

野沢様。

この映画では映像の持つ力強さを実感しました。
映像だとなかなか登場人物達の心情がなかなか
言葉のようにはっきりとしない事もあるかと思うのですが
ラストソングは力強く僕らの胸に迫ってきましたね。
本当に良い作品は時間の流れの中で色褪せることなく
輝けるものではないかと思います。
テクノロジーが進歩しても人の心の根幹の部分は大きく
違わないと個人的には思っています。
だから、派手さは少なくてもしっかりと観る人の心を掴める
貴重な映画だと思います。
次回の上映会、すでに今から楽しみなんです。(笑
気が早いですけど。(汗
by joker (2008-04-20 23:54) 

ピョル

joker様、初めまして。私も昨日の上映会に参加させていただきました。

私は上映会参加にあたら、できるだけこの作品をまったくの情報なしに、まっさらな気持ちで見たいと思っていました。そして実際見た後、joker様と同じように、今この時に見れて良かったと思いました。

私も公開当時は主人公達と年が近いので、どんな風に受け止めていいかわからなかったと思いますが、今年齢を重ねて、なんとなくですが、彼らを理解できるような気がします。

鑑賞後、野沢さんのご友人の方が、公開当時ももちろんご覧になったのですが、今見るとまた別の見方というか、感じ方がある、とおっしゃっていました。また台詞が秀逸でしたね。改めて野沢さんの言葉の選び方というか、印象に残りました。

『誰かのために生きるような時代は、自分の足で通り抜けなければいけない。』

↑この言葉は特に印象に残っています。本当にこの作品を、今見れて本当に良かったと思っています。

by ピョル (2008-04-21 00:05) 

joker

ピョル様。

はじめまして。niceとコメント頂き有難うございます。

おそらく主人公達と同じ世代を、今生きている人達にして
みたら分からない部分もあるのかなとも思います。
こうした時代を過ぎてみて、いろいろな事を経験して、
改めて振り返ってみると、本当にそうだなぁと実感出来る
ような気がします。
映画や小説なんかもそうだと思うのですが観る人の数だけ
感想があると思いますから、世代が違えば受け止め方も
違うと思います。
ですから、野沢様のご友人の方がおっしゃられたように
時間を重ねられた今観ると、当時とは感じ方も違うでしょうし
今だからこそ新たに感じることもあるのだと思います。
それと台詞に関しては私も秀逸だと思います。
決して難しい言葉を使っているわけではないと思うのですが
胸の中にある想いをしっかりと掴んだ深みのある言葉だと
思います。

「誰かのために生きるような時代は、自分の足で通り抜けなければいけない。」

この言葉は普遍的なもので、時代が変わっても生き続ける言葉だと
思います。
野沢さんの作品の多くには、こうした生きる事に対するメッセージが
随所に刷り込まれているなと感じます。

今回、この作品を観れた事は本当に良かったと思います。
いつまでも観る人の心に残る作品をと望んでおられた野沢さんの
作品に対する真摯な姿勢がスクリーンを通して伝わってきました。



by joker (2008-04-21 01:08) 

yuka

東宝の撮影所の中の試写室!
それは貴重な体験をしましたね (☆^ω^)

今でもたくさんのファンがいらっしゃる野沢氏。
やっぱり良い作品はずっとずっと愛されるもんなんですね♬


by yuka (2008-04-22 16:52) 

joker

yukaさん。

本当に貴重な体験でした。
思いの外、こじんまりしていたのは意外でした。
でも座り心地もよくて落ち着いた雰囲気で良かったですよ。
また入れる時があるかなぁ。

そうですね、作品は人の中に残りますからね。
特に気に入ってるものは。
歌も小説も、映画も。
時間の流れに風化もしないで。

by joker (2008-04-23 22:06) 

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