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影踏み [横山秀夫]

影踏み

影踏み

ノビ師。
深夜寝静まった民家に忍び込み現金を盗み出す
忍び込みのプロである真壁修二が主人公。
真壁の幼馴染でもあり、恋人でもある安西久子
そして、真壁が大学の頃、焼死した双子の弟の
哲二の3人の織り成す切ない犯罪小説。
エリートだった真壁の弟が受験に失敗し、窃盗に
手を染め坂を転がった人生に浸かってしまった。
そんな弟に悲観した母親は弟を道ずれに焼身自殺を
はかり、弟は炭化した骸となってこの世を去った。
真壁は司法試験を目指していたが、これを機に法を
捨ててしまう。
道を踏み外してしまう真壁とそんな真壁を捨てきれない
久子。この世を去った時から真壁の裡に棲みついた啓二。
人の弱さ、哀しみ、脆さを抱えながらも人としての
一線を越えない強さを描いている。
7つの物語で構成されている。
ハードボイルドな雰囲気を漂わせながらも、推理小説と
しての色をしっかりと残している。
7つの物語で構成されるが故、ひとつひとつの話は短編
のようなまとまりになっている。
話が少し急いでいる感もあるが、読者をしっかりと引き込んで
いきます。
ストーリーの展開よりも心理描写を楽しむ作品だと言えるような
気がします。
登場人物の設定からしてすでに哀しみを抱えているので
自然とそんな読み方になったのかもしれませんが。
中でも印象に残っているのが「使途」
これは他の物語と少し違って、昔の童話を思わせるような
内容でありながらも真壁の情を感じる物語。
普段は仕事として、ノビ師をしている真壁。
しかし現金を盗むのではなく、与えるほうになる。
ただし、現金ではなく、少女へのクリスマスプレゼントとして。
里美三郎はかつて警備員をしていた時に、少女が好む人形を万引きした
犯人を現行犯で捕まえようとして逆に足を刺されてしまった。
そんな状態でも犯人を捕まえようとして追っていたのだが
逃走に必死だった犯人は少女の目の前でバイクに撥ねられ死んでしまう。
その時犯人の盗んだ人形は一人の少女の手に握られていた。
少女の父親だった犯人はプレゼントをしたくて盗んでしまった。
そうとは知らずに職務を全うしようとした男は自分を責めてしまった。
そして、人形を手にした少女が哀れに思えて、サンタをする事を
思いつく。そこで忍び込みのプロに頼み、プレゼントを5年の間続けていた。
しかし、その忍び込みのプロがあえなく御用となり塀の中。
そして真壁にその願いが委ねられる。
自らの仕事としてでなく、危険を冒す真壁。
プレゼントを届けた際に目にした少女の手紙を持ち去る真壁。
その手紙の内容の優しさと切なさに、心打たれます。

わたしにとって、サンタさんは、死んだお父さんと同じくらい大切な人です。

少女に手紙はこんな文章で締めくくられていました。

そして、最終の物語の「行方」。
ラストに明かされる過去の出来事の真相。そして真壁の想いの根底にあった
ものに逆転のドラマを用意した作者。
その後の真壁がどうなるのかが読み終えてからも気になってしまった。
ノビ師から足を洗って久子と共に人生を歩むのかと想いながらも
それほど簡単ではあるまいとその胸の裡を読んでみたりと。
おそらくこの作品は好みが分かれる物語でしょう。
弱さ故に人を傷つけ、人の人生を巻き込み、そこから抜け出せないで
いる弱さ。それを題材にした物語を好まない読者には敬遠されるかもしれないが
人は得てして弱いもの。それを受け入れる懐を持った読み手には心動く
作品のような気がします。
全体が哀しみの色に染められ、爽やかさの対岸に位置する作品と言えるでしょう。


 


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