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沈まぬ太陽 [本]


沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)




沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫


もうあの衝撃から20年以上の歳月が流れた。
まだ学生でアルバイトに勤しんでいた時、そのニュース
流れた。
夏休みの真っ只中、家族連れの多い日でその日も忙しい
日だった。
日航ジャンボ123便、墜落。
500人以上の乗客絶望というニュース。
奇跡的にも一命を取り留めた乗客が自衛隊のヘリに救出
される映像はまだ記憶に残っている。
沈まぬ太陽はそんな日航を基に小説的に構成された物語。
主人公恩地を中心に物語は展開して行きますが、企業を
取り巻く様々な環境、人間関係が絡んだ利権、私欲が企業を
そしてそこで日夜働く人々を苦しめていく様がリアルに描かれ
ています。
恩地はその象徴として描かれています。
空の安全を強く願い、労働環境の改善を会社側に強く求め、
戦った結果、会社から疎まれ海外の僻地へ10年にも及ぶ
流刑に等しい懲罰人事を受ける。
それでも、僅かながらに会社に残る恩地と共に戦った社員の
ためにも節を曲げない生き方を貫き通す。
男の矜持とも言えるのかもしれないが、矜持の一言で片付ける
には、その月日は長く苦しいもの。
日々平凡に過ごす自分にはおよそ実感を伴うものとして感じとる
事の出来ないものだろう。
物語は5巻の構成。1,2はアフリカ編。3は御巣鷹山編。4,5
は会長室編となっています。
1,2では恩地の僻地での孤独な生活、3ではジャンボが墜落
した際の描写や遺族の描写が中心ですが、悲惨の言葉に尽きます。
そして、4,5では新たな会長を迎えての企業の再生を描いて
いますが、その道のりは厳しく、魑魅魍魎の中での奮闘ぶりが
悲哀を誘い、人の欲深さ、汚さ、弱さが前面に描かれています。
100匹の猿の中、99匹が片目の猿で1匹が両目の猿が居たとしたら
普通である1匹の猿が異端として疎まれてしまう悲しみのように。
事実関係を基に小説的に描かれているだけに、結末も事実に近い
形で幕を降ろしています。
企業を救おう、500人をもの犠牲者、遺族のためにも襟を正し、
空の絶対安全を築こうとする勇気ある数少ない人たちの姿が
救いと言えば救いだが、あまりに非力であり、逆に言い換えれば
腐敗が巨大であって、読後感は虚しさであり悲しみが残りました。


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それでも、警官は微笑う [本]


それでも、警官は微笑う (講談社文庫)

それでも、警官は微笑う (講談社文庫)



警察小説にしては人情の厚い小説という感じでしょうか。
酷薄という印象の刑事はこの物語の中には出てきません。
物語の序盤に警察と麻薬取締官の立場上の違いから諍い
に発展しそうになるのですが、これがそうならない所が
ポイントでしょうか、全体的な雰囲気としては。
 密造拳銃を追い続ける武本刑事。
無骨で曲がったことが嫌いで事件を徹底的に追い続ける
タイプで、厳つい外見とは逆に、自らに非があると感じる
時には素直に非を認め謝罪するというタイプ。
 犯人逮捕に対する執念は凄まじいものがあり、立場や
組織を超越して行動してしまうタイプ。
 又、武本とキャラとして対極というのがコンビを組んで
いる潮崎刑事。有名な茶道の家元の出でありながら警察の
現場を希望した変り種。とにかくよく喋る刑事。
一見、ひ弱で浮ついた青年のように感じさせるが、彼なり
の捜査方法で犯人逮捕に前向きの姿勢は、武本に通じる部分
がある。武本自身は潮崎を持て余している感じなのだが、
実は潮崎のほうが階級は上、要するに上司。
 このコンビが犯人を追い詰めていく様が物語の軸になって
います。
 物語の中の事件の展開もいいのですが、やっぱりこれは
このコンビを中心にした、それを取り巻く人々とのやりとり
がいいですね。
 結局、主犯の男は逮捕されずに生きているのか、死んだのか
も明らかにしないままでの終結ですので、そうした意味でも
読み終わった後に残るのは登場人物たちですね。
 ただ、個人的な好みとしては少し迫力に欠けたかなという
印象も残りました。刑事や麻薬取締官らが人が良いというのが
かえってインパクトを弱くしてしまったかなっていう感じです。
 良くまとまりすぎたかなぁっていう感じです。
あと、麻薬取締官である宮田が守ろうとしていた女の終盤での
言動はちょっとサプライズでした。
 まぁ、物語の流れとしては決してナシの展開ではないんでしょう
けど命を張った彼に対しての答えがあれだと、彼が救われない
くて、物語に棘を残したかな。
 もちろん、これも読み手次第なのかもしれませんが。

 「それでも、警官は微笑う」のタイトルより、彼らのここから
先がどうなるのか見てみたいという印象も残りました。
 キャラが良いので個人的には続編も読みたい気がします。
続編がすでに出ているのか、出ていないのかは分かりませんが
少し期待したいです。

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再生巨流 [本]


再生巨流 (新潮文庫)

再生巨流 (新潮文庫)



ビジネス小説。営業に籍を置く吉野はビジネスアイディアに
富み、これまでに幾度となく新たなビジネススタイルを創って
来たのだが、形になったものばかりでなく、影では没になったり
その後を引き継いだ者達が泣きをみるようなものも多々あった。
ある程度形になるとあとはさっさと手を引き、次のアイディアを
形にするのに邁進し、部下を育てること、管理という面では
会社から×を下されてしまう。
 会社は新規開発部を設立し、そこの部長を吉野に任せ、非常に
厳しいノルマを課した。そのノルマが達成されなかった時には
相応の処分が下される、体の良い左遷人事だった。
 やられたと想いが吉野を貫くが、元より仕事に対する情熱を
燃やし続けてきた彼は、それに挫けることなく更なる上昇志向を
もって職務を全うしようとする。
 しかし、そのノルマを達成するに、新たに異動となって送られ
てきた部下は、これまた役立たずというレッテルを貼られた社員
だった。絶望的な状況だが吉野はここから巨大なビジネスモデル
を構築し成功を収めていくという、敗者復活のサクセスストーリー
タイプの物語です。
 主人公の吉野は情熱的で鉄拳を振るうほどの設定。
正直言ってこうしたタイプが自分の上司だったら嫌だなと思わせる
タイプ。暑苦しいというか、はた迷惑というか。
 ただし、吉野が家族を大切にする姿には少し救われるます。
 こうしたキャラの設定だったからこそ物語が最後までぶれずに
突き進めたのと、終盤での彼の変化に対して良い印象を与えられた
ので、これは良い設定だったのかなと思います。
 ビジネスの成功を時系列的に展開していく物語ですので紆余曲折、
山あり谷あり、トライアンドエラーをしながら主人公が苦しみの
中から道筋を見出し結果的に成功を収めるのが好みなのですが、
ビジネスモデルをスタートさせるまではこの流れがあるのですが、
一度スタートを切ってしまうと、ピンチというピンチが訪れなかった
のが少し残念というか、メリハリが少なかったかなという感じがします。
 軌道に乗ってしまったら問題を問題としない展開というか、簡単に
解決してしまいます。
 逆に言えば、ビジネスモデルが破綻することなく、細部までよく
練られた作品であり、よく考え抜かれた作品と言えるのでしょう。
 吉野の部下も物語の終盤には出来る社員に変貌しているのですが、
そのあたりの描写もさして無いままに辿りついているので、そうした
面も欲しかったかなという感じがしました。
 それと、物語の中でパートナーとなる相手企業の描写も少なかった
かなという印象です。
主人公吉野の描写に対しての相手側の描写もあれば、もっと物語が
膨らんだような気もします。
 それにしても、良く考えたビジネスモデルだなと感心しました。
この物語は出来た時に、現実の世界ではこうしたモデルがあったのか
どうかは分かりませんが、それが当時無かったのだとしたら作者の
力量は凄いなと思いますね。
 全体的に少し流れが単調な印象は残りましたが、勢いがありハッピー
エンドに好感が持てる作品だと思います。

Tokyo BlackOut [本]


TOKYO BLACKOUT

TOKYO BLACKOUT

  • 作者: 福田 和代
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本


東京大停電。大都市東京が一斉に停電したら、と
思ったらこの本を手にしていました。
ここのところ、地震、台風、津波と自然災害の中での
人々の奮闘ぶりを描いた作品を読んできたので、
今回も、自然災害ではないけれど住民にしてみたら
前触れの無い突然の事態の前にどんな奮闘をするんだろう
という期待値があって興味をそそられました。
 流れとしては過去自分の親が目の前で殺害され、
恋人が、ネットで目的を同じくした3人に、何の関係も
ないのに殺害された、電力会社に勤める一人の青年が
仇討ちに走るという流れ。
その流れのなかで、外国人労働者も巻き込んで行きます。
 研修と言われて、日本の技術を学びにきたアジアの
青年は、研修とは名ばかりの劣悪な労働条件の中で
我慢の限界を超えた時に、そこの上司を殺害。
逃亡を続ける中で、仇討ちを企てている青年と絡んで
行きます。
 構成としては悪くないと思うんですが、この青年が
あまり登場しないんですね。
 大停電の中で右往左往する電力会社の社員、奮闘する
刑事達は描かれているんですけど。
警察ものの小説ならそれでもって思うんですけど、少し
話が単調っていう感じです。
 それとこの青年と外国人労働者達との絡みも少ないです。
彼らが共謀して事件を起こしていくんですけど、青年と
外国人労働者が事件を起こす背景がまったく違う関係で
次々起きる事件に両者の関係性が希薄で、それが物語の
どこかで納得できるクロスポイントがあるのかと思って
いたんですけど、最後まで距離を置いたままで、消化不良
って印象が残ってしまいました。
 また、この青年が大停電を起こした理由がラストシーン
だけの為だったと思うと、スケールの大きさに見合う
納得とか、読者を惹きつける理由とか共感が薄すぎる
ような気がします。まったく分からないわけではありませんが
それだけ?って感じで。
 確かに東京に対する復讐って意味では、こういうスタイル
もありなのかなって思いますけど、復讐という程には非情に
なりきれないというか、中途半端というか、この青年のキャラ
が弱いんでは?って気がしました。
 物語の舞台は大きいですけど、それに見合った緊迫感、
臨場感、登場人物への共感が薄いように感じられました。
 作者の意図がどこにあるのかが掴めなかったのが残念です。

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空飛ぶタイヤ [本]


空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2006/09/15
  • メディア: 単行本


この物語はかつて某財閥系自動車メーカーによる
何回かのリコール隠しをベースにして描かれた作品の
ようです。
 赤松運送のトラックが事故を起こします。
それはタイヤが車軸から外れてしまい、外れたタイヤが
歩いていた主婦の背中に直撃して死亡してしまいます。
その時、主婦と一緒に歩いていた子供も怪我をしますが
幸いにも命に別状は無い怪我ですみます。
 警察が入って事故原因を調査するのですが、これが
赤松運送の整備不良だと結論づけ、赤松運送の社長である
赤松に逮捕状が出そうになります。家宅捜索も入って
いよいよかと思われたのですが、決定打となる証拠が
見つからずに逮捕が出来ません。というか家宅捜索の
結果は逆に、整備はきちんとされていたという結果に
なってしまいます。警察もここから先はしりつぼみに
なっていきます。
 赤松は一度は社員の整備不良を疑うのですが、きちんと
整備されており、自分の会社の落ち度による事故では無い
と確信し、逆に警察に調査報告をしたメーカーに、調査
内容の詳細を確認しようとするのですが、埒があきません。
相手は財閥系の自動車メーカー。殿様商売を絵に描いた
ように、町の中小企業の赤松のことなど鼻にも掛けません。
警察もまた、自動車メーカーの調査結果を疑うことも
しません。そして国土交通省でさえも、提出された結果に
疑問を挟む事もありません。
 そんな中、赤松運送の大口顧客からは取引中止を宣告
され、取引銀行にも融資の中止と、これまでの融資の
全額返還を要求されてしまいます。
 それでも、自らの潔白を信じ、社員の家庭を守るため
世間の非難の目にぐっと耐え、殿様企業、警察と徹底的
に戦う姿が読む者に感動を与えてくれます。
 戦う姿は、とにかく必死です。事故の原因を探るために
これまで、同じような事故を起こした運送会社を渡って
話を聞いて、事故はメーカーの欠陥が原因だということを
突き止めようとします。
 それらの運送会社はそれこそ、日本全国各地に散らばって
いるのですが、それでも頭を下げて訪ねていきます。
 門前払いをされるところ、赤松運送の整備不良だと決め
つけて逆に非難をされるところもあり、簡単には行きません。
それでも、好意的に対応してくれる会社もあり、何とか
情報を集めて、自らの潔白を証明する証拠を集めます。
 本当に執念と思える赤松の奮闘ぶりは感動的です。
 一方、被害者の家族からは訴訟を起こされてしまいます
が、ここでも赤松の弁護にあたる弁護士が、力になって
くれます。又融資を止められ窮地に立たされるのですが
別の銀行が手を差し伸べてくれます。
 それは赤松のこれまでの奮闘する姿を見て共に戦おうと
してくれる戦友のようにも見え、喜ぶを赤松と共に読み手
にも共感を与えます。
 殿様企業を筆頭に、圧倒的に不利な状況の中で、決して
諦めずに、戦う姿は本当に感動的です。
 それに対して、殿様企業の対応は腹立たしさの一言、とい
うか、これは一種の犯罪だと思えます。
 財閥系企業であり、何があってもユーザーは自分達から
離れていかないという傲慢さが、客を客とも思わない対応
に出てきます。が一方企業の中にも、そうした隠蔽体質に
対して戦おうとする力もあり、組織の中での駆け引きも
リアリティがあります。
 この物語は、実際に起きた事故をベースに描かれたもの
ですけど、こうした殿様企業だなと思わせる事例は身の回り
でも結構あったようです。
 リコールの対応も横柄であったりとか何かと対応が上から
目線で、憤慨していたという声を何回か聞いたことがあります。
結局、そのユーザーは、そのメーカーの車から別のメーカー
の車へ乗り換えてしまったようです。
 最近は、こうした不正の発覚が多くなってきました。
物語では自動車メーカーですが、食品に関しても本当に酷い
と思える不正もあります。
 そういう意味では、この物語は今になってもなお読んで
みて欲しい一冊だと思います。
 ユーザーとしての立場の人も、供給側の立場にある人にも
是非、お薦めです。
 まぁ、そうした事は別にしても、この赤松の奮闘ぶりには
グっとくるものがあります。
 ボリュームは結構ある本ですが、物語の中に引き込まれる
と苦にならずに読めるのではないかなと思います。


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眠れぬ真珠 [本]


眠れぬ真珠

眠れぬ真珠

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/04/27
  • メディア: 単行本


どういったら良いんでしょうか、この物語。
恋愛小説なんですけど、いろんな顔というか
側面がある小説のような感じなんです。
少女コミックのような雰囲気もあるし、成長
した大人のひとつの愛の形という感じもします
し、加齢、老いに対する切ない悲哀もあり、
その中にもしっかりとした光を放つ、読む人に
勇気を与える物語のような感じもします。
いろんな要素を含んだ小説ですね。
 主人公の咲世子は少し早い?更年期を迎えた
45歳の版画家。彼女が出会う青年、素樹は
映像の世界で身を立てようとする28歳。
この二人がカフェで出会って恋に落ちるという
物語。
 物語全体的に言葉の使い方がとても雰囲気が
あって、恋をする二人の様子を綺麗に描写しています。
 カフェでの場面、彼が咲世子を映像に収めて
行く場面、抱き合う場面等、最初から最後まで
ぶれる事なく描かれています。
 又、版画家であり黒と白の対比によって一つの
絵を描いていくのですが、この黒と白の対比が
いろいろな物を表現しているような気がします。
若さと老いであったり、恋をする前と後あったり、
恋の始まりであり、終わりであったり。
そういう意味で言えば、人生論的な側面もこの
小説には含まれているような気がします。
 それと印象的な台詞というのがいくつかありました。
「今日は二度とないし、明日より必ず一日若いんだから」
とか
「身体だけじゃだめだよ。やっぱり恋とかしないと。
自分からちゃんと心を動かさないと、わたしたちの年
ではだんだん心だって硬くなってしまう」
とか
「わたしにもまだ、よくわかっていない。でも、わたしは
潮の流れにのって、長い年月海をさまよってきたかけら
たちを、とても愛しく感じるの。
ああ、この子たちもがんばってきたんだ。表面の生々しさ
はきれいに抜け落ちているけれど、それによって逆に
自分らしさが浮き彫りになったんだなあ」
「見て、それでも、この子はこうして自分の形を失って
いない。それどころか、昔よりもますますきれいで強く
なっている。わたしは漂流物を見ていると、いつも思う
んだ。これはものなんかじゃない。ここにあるのは、
流れ着いた光だって」
とか
「年をとって傷ついたとも、薄汚れたとも思わない。
その傷はなんとか若さという嵐をのり切った勲章だと
思う」
 年齢を重ねるという誰にでも訪れる老いに対する
悲哀に対して、主人公はそれに別の側面から光をあて
しっかりと肯定している様は元気を与えてくれるような
気がします。
 もっと積極的になってもいいんじゃない?という
ようなメッセージを感じます。
 年齢を重ね、いろいろな事に対して否定的になっていたり
ふさぎこんでいたりする女性たちに対しての著者からの
暖かいメッセージのような気がします。
 年齢を重ねる事には悪い面だけではなくて、良い面も
あるんだと教えられます。
 全体を通して性の描写をもう少しぼかしてもいいような
きもしますが、これは読みて次第なのかなとも思います。
そうした描写が好みで無いという方には少し印象がマイナス
になるかもしれませんが、それが気にならなくて、
 自分の中で自分の年齢に対する負の思いを抱えている
女性にお勧めかな?と思える一冊です。

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狼の血 [本]


狼の血 (カッパ・ノベルス)

狼の血 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 鳴海 章
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


サラリーマンである甲介は毎日退屈な日々を送っていた。
無駄を生産し続けるような仕事をこなし、毎日僅かな金で
食を繋いでいるだけの生活。
そんなある日、中学生の時の同級生が突然彼の家を訪れた。
いわゆる不良と言われていた男でどうやら地元のやくざに
なったようだ。
その男が荷物を預けて翌日から姿を消した。
荷物を預ける時に大きな仕事をする為の道具だと言い残して
いた事から、それが危ない道具である事をうすうす感じて
いた甲介。
やがて同級生が死体となって発見される。
暴力団同士の抗争か、ヒットマンとして出向いた先で殺されたか、
いずれにしても、極道に殺されたと判断した甲介。
手元にあるものを警察に届けて、身軽になろうとしたが、
タイミングを外して届けられず、街をふらついた時、甲介を
クスリでいかれた若い男が襲う。自分はこのまま蹴り殺される
のではと、恐怖を感じたとき、バックの中の拳銃で相手の
一人を撃ち殺してしまう。そしてそれを目の当りにしたもう一人の
男も撃ち殺そうとするのだが、どうしても引き金が引けずに顔を
蹴り飛ばしてその場から命からがら逃げ出した。
しかし人を殺してしまった罪悪感、絶望感に打ちひしがれてしまう。
いつ逮捕されるかと思いながら、日々を送る。
これまでの生活リズムを変えずに淡々と。
そのうち、人を殺めた感触が日々の単調なリズムの中で少しずつ
甲介の血の中に溶け込み、自分の血として違和感を無くしていく。
そして、日々の生活の中で少しずつ蓄積された鬱憤と怨念を晴らし
ていきながら、破滅へ進んで行くという内容。
 日頃から組織に属して日常を積み重ねていくと、少しずつ
負のエネルギーを自分でも気付かないうちに溜め込んでしまって
いると、ふと感じる時がある。全てを吐き出してスッキリとして
しまいたいと思う時もあるが、多くの人はそのはけ口を酒で
あったり、恋人と共有する時間であったり、友と過ごす時間で
あったり、車やバイクに求めてたりするのだが、その術すら持つ
事も無く、又持ちたくても持てない状況だったりした時、膨らむ
だけの負のエネルギーが描き出す未来はと思うとぞっとする。
 物語の中で、甲介は些細な理由で次々と人を殺めていくのだが
結局は、自分の意にそぐわない人を、その端から殺めていっている。
人は何万年という年月を重ねてきて社会という、人と人との関係
を築き上げてきた。人と人が社会という中で、自分以外の価値観
を持つ者の存在を認めないとした時、社会というコミュニティは
崩壊してしまうんだろう。そういう意味では、甲介はある意味
人が多くの血の上に築いてきた壮大なる歴史、努力にたいする
謀反であるとも言えるのだろうか。
そう感じると、決して甲介のようであってはならないと強く思う。
 しかし、この物語では組織に勤める者の日常が甲介という
主人公を通してよく描写されているなと感じる。例えば、物語
では毎朝、決まった立ち食い蕎麦屋で同じものを食べるのだが、
そこでの描写では自分でも同じような印象をもった。
誰もが同じようなスーツを着て、隣にいる人の事に構うことも
気に留めることもなく、黙々と頭を垂れてどんぶりに向き合う様
は養鶏場で卵を産むために飼われて、餌を啄ばむ為だけに首より
上だけ動かす事を許され、ひたすら首を動かす鶏のようだと描写
しているが、会社の中で食事をする人々も同じようなもので
同じ色の服を着て、外部の業者から入れてる選択の余地すら無い、
硬質なプラスチックに入れられた給食を、列をなしたテーブルに
座って、頭を垂れて食している姿を目にした時には、まるで家畜
のようだと思った事があったことを思い出させられた。
そんな姿を見ながらそこに居て同じく食事をしている自分も同じ
だと。
きっかけがあれば、人が簡単に崩れてしまう。
そして、崩壊の歯止めを持たない者にとっては、それはどこまで
でも、行き着くところまで行ってしまう。
それは決して特別な環境に置かれたものでなくとも。
そう、サラリーマンであっても。
そんな姿を描いた物語です。
それにしても、小説も読むタイミングというのがありますね。
この小説も、今時の事件の前では、異質的な要素というのは
掠れてしまっている気がします。
犯罪の動機に理解が出来ていた時代であれば、この小説のもつ
インパクトはもっともっと大きかったような気がします。


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TSUNAMI [本]


TSUNAMI(津波)

TSUNAMI(津波)

  • 作者: 高嶋 哲夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本


前作の「M8」では直下型巨大地震が東京で発生
するという物語で、直下型なので津波の発生
というのは無かったのですが、今回の「津波」は
まさにタイトルどおりです。
物語は、東海、東南海、南海地震が連鎖して、ほぼ
同時に発生。
トラフが600キロメートルに渡ってずれ、広い範囲で
大きな津波も発生するという展開。
前作の「M8」のときもインパクトはありましたけど、
今回のほうがより印象が強いですね。
ほぼ西日本の太平洋側全土で津波が押し寄せてくる
という展開です。
以前、スマトラ沖にて地震が発生して、津波が押し寄せ
被害者数は32万人にもなるという震災があったのだが
この物語もそれに匹敵するくらいに大きな規模の地震
になっており、描かれている災害の規模も大きなもの
となっています。
この地震での被害総額が500兆という数字を出してきて
います。
国家予算よりも大きな額がほんの僅かな時間で消失
してしまうという事でも、規模の大きさが普通では無い
というのが判ると思います。
物語の流れとしては、今回は市役所の防災課の男、黒田が
絡んできます。黒田はかつて瀬戸口と共に地震の研究に
携わっていたのだが、その方面には進まず、地域の市役所
の防災課に就職をする。
彼は、ここで地震が発生した際の津波の及ぼす被害を想定
した津波ハザードマップをつくり、地域にフィードバック
をして防災、減災に役立てようと努めている。
かつて、大学で研究していた内容をバックグランドに論理的
な構想を立てている。
しかし、これを普及させようと各方面に顔を出して活動を
しているが、相手によっては迷惑がられてしまったりもして
いた。それでも彼は自らの使命のごとくひたむきに活動を
続ける。
そんな時に、東海地震の警戒宣言が発令されるのだが、時を
同じくしてサーフィンの世界大会が開催されようとしていた。
黒田は必死に、浜にいる人達を避難させようとするのだが、
災害に対する意識の低い人たちは一向に耳を貸さない。
又、海岸近くで運転を行っている原子力発電所があった。
定期点検を終えたばかりで、少しずつ出力を上げる運転を
再会していたところであった。
そして、実際に東海地震が発生。しかし百数十年のエネルギーを
溜め込んだと言われている地震にしては規模が小さく、震度5
程度のもので被害もすくなかった。
これで、浜にいる者、役所に勤める者、原発関係者、政治家達
は完全に拍子抜けして、一気に気を緩めていたのだが、この
地震はエネルギーの全てを解放してはいないという計算を弾き
だした瀬戸口は、必ずまた地震が来ると警鐘をならした。
先の地震の数十倍の地震がくると。それを受け、総理自ら国民に危険を
訴えるのだが、それは思うほど効果を示さないまま、瀬戸口の計算通り
に巨大地震が連鎖して発生した。
大地は奮え、海は吼えた。そして海岸線に巨大は波をたてて海水
の塊が突進してきた。
物語のタイトル通り、津波が襲うのだが、それも波の津波ではなくて
巨大な津波が襲ってくる。巨大地震が連鎖発生した事により、共振に
よって、波の高さは30メートルを超えていた。
その破壊力は凄まじいものであり、津波に飲まれた人たちの遺体の
損傷は激しく、洗濯機に石とナイフをいれて掻き回されたような状況
の損傷の仕方だった。
この描写を読んでいるだけで、かなりの恐怖感が迫ってきます。
こんな津波が来たら、ひとたまりもないと。
そして、それは海岸線に限った事ではなくて、川を逆流した海水が
都市の中心にも流れ込み、街を、地下を海水で洗い流していく。
第2波、3波と立て続けに津波は襲う。様々な要素が絡んで被害はこの
上ないくらいに大きく広がっていく。
これは少し大げさだと思いながらも、まったく可能性の無いものでも
無いと思うと、急にリアリティを伴う恐怖となって迫って来ました。
東海、東南海、南海の3つの巨大地震が連鎖発生したという設定であり
津波も巨大であるなら、揺れによる街の破壊の仕方も最大級。
幾つものビルが倒れ、ビルから降りしきるガラスの雨あられによる
人々の裂傷、圧死、高層ビルから投げ出される人々が道にいる人々の
上に降ってくる。これ以上ないと思えるような描写で、空爆を受けた
ような壊滅状態の街になってしまいます。
「M8」の時のような予知が今回は発表が出来ないでいた。予知にも条件
があり、突発的な要素が絡んだものに関しては、予知が非常に難しいと。
結局、瀬戸口も自ら予知は結局消極的な対応でしかないと警鐘を鳴らして
いる。
予知が出来たとしても、荷物を纏めて右往左往するくらいが関の山であり、
地震は予知が出来たとしても、必ず来ると。避けられない地球の営み、
息吹であるなら予知よりも更に、防災、減災に努めるべきだと訴えて
いる。巨大地震が発生した後の対応は、右往左往する小学生のような印象であり、
地震に対抗する手立てがまったくと言って無い状況で物語は描写されています。
阪神大震災の後、街づくりの観点も見直しが必要であるという声も上がった
が、自分の周囲を見渡してみてもその教訓が生かされていると胸を張って
言えるような状況ではない。それは大都市東京でも同じであろう。
もっともっと防災に予算を割くべきであると訴えている。
地震に限らず、毎年やってくる台風や豪雨も含めて予算を取るべきであると。
必ず来るとうい前提であるならば、これは必要経費であると。
政府はもちろんの事、私達個人のレベルにおいても、もっともっと準備を
厚くする必要があるであろうと警鐘をならしています。
物語の中で、地震発生後の対応で数少ない成功例として全国をカバーする
防災ネットワークが有効だと描写されています。
各地域の避難場所での責任者との連絡方法、必要な物資、人員等の要求の
情報が一元化できる、インターネットを使った広域な防災ネットワーク。
必要な物資を必要な場所に効率よく配布する為のシステム。
中央に頼るばかりではなく、こうした各地域、現場サイドでの横のつながり
がとても大切であると、こうした描写をいれて提案されています。
唯一、予知が出来るとされて予算を割いて続けられている東海地震予知。
果たして本当に予知が出来るのか。またそれを発表する事が出来るのかは
この物語を読んでみて、改めて疑問に感じてしまいました。
そうしたことを踏まえれば、やはりもっと防災の意識を高めていかなければ
いけないんだなと考えさせられました。

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ジェミニの方舟 東京大洪水 [本]


ジェミニの方舟―東京大洪水

ジェミニの方舟―東京大洪水

  • 作者: 高嶋 哲夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本


「M8」の災害小説のシリーズ3作目となる完結編。
「M8」は東京を直下型の巨大地震が襲うという設定
だったが、この「ジェミニの方舟」は巨大台風が
東京に上陸するという設定。
今年の夏はゲリラ雨で被害が出たところもあって
雨での災害という意味では強い印象が残っている。
毎年台風がやってくるという面においても、身近な
設定になっている。
「M8」で取り上げられた巨大地震も東海地方に住む
人にとっては身に迫るものだが、長い期間来ると言われ
続けて未だに発生していないという現状からみると
「ジェミニの方舟」の台風による災害のほうがより
身近に感じられる。
物語の内容としては「M8」の時と展開はほぼ同じ。
気象屋の玉城は二つの台風が合体して今まで経験
した事のない巨大台風が日本の首都、東京に上陸
するというコンピュータシミュレーションが弾き
だされた結果を社会にフィードバックしようとするが
気象庁も都知事も区の役人も信用しようとしない。
この結果を得る前に「荒川防災研究」という論文を
まとめていた。その内容は荒川と隅田川の地勢、地質、
水量、水流をあわせて決壊の可能性のある危険箇所、
洪水の広がり方をシミュレーションしている。
氾濫した場合は東京駅を中心に都心の三分の一が冠水、
地下鉄は水没して、地下街にまで水が溢れて来ると
している。
この論文は発表を目の前に関係者に配布されており
それなりの反応を感じてはいたのだが、この荒川防災
研究と同じ結果をもたらすと思われる巨大台風が発生
した今は、逆に関係者は目をそらそうとしている。
又、玉城の妻である恵子は一級建築士であり、数年に
わたるプロジェクトのタワーマンションの完成を目の前
にしていた。このマンションの建設の責任者である
恵子の上司も「荒川防災研究」に目を通しており、
完成を前に玉城からマンションの安全性についてコメント
を求めたのだが、玉城の口から出る言葉に不安と
焦燥感を強めていくのだが、ここへ来て工事の停滞は
会社への多大な損失を招く結果となる為、恵子の設計を
信じて工事を進めていく。
こうして多くのものが、巨大台風に対して楽観視して
いるなか、玉城は不安を募らせながらコンピュータから
はじき出されるシミュレーション結果を見つめていた。
そしてそれは、現実のものとして最悪の結果をもたらす
事となってしまう。

「M8」は巨大地震でその破壊力は凄まじいの一言に尽きる
が、物語の描写として破壊力の恐怖感というか身に迫る
臨場感は正直強烈ではなかった。それぞれの災害箇所の
描写はあるのだが、そこにあるのは災害後の描写と人々
の疲れた姿であり、災害が発生しているその時の描写が
割と薄い。一瞬ですべてを破壊する地震というものの性質
から、こうした描写になっていると思われる。
だが「ジェミニの方舟」の巨大台風による災害では時系列
を追ってじわりじわりと災害の被害が大きくなり、それに
対応しようとする人々の姿がじっくりと濃く描写されており
緊迫感を伴って読者に迫ってくる感じがします。
政治家や役人はかつて経験した事のない災害の前に対処の
方法に苦悩し、玉城を含め災害に体を張って対処しようと
する自衛隊の隊員。又玉城の家族も圧倒的な自然の力の前に
叩きのめされそうになりながらも、必死に立ち向かおうと
する姿はリアリティがあります。
妻である恵子は自身の設計したマンションで倒壊を免れる
ために、現場作業員とともに強烈な風雨の中で出来る全て
の対応をします。
夢の第一歩としたこのマンション建設のために、ろくに家庭を
も顧みず、子供の面倒も親に押し付けており、そんな姿に
苛立ちすらも感じたが、この災害の中でロープを握り、工具を
握り、更には重機をも運転して、文字通り体を張った姿に声援
を送りたくなりました。
又玉城と恵子の子供である大輔も災害の中で、必死に台風に
立ち向かう姿に、ひやひやしながらも頑張れと声を掛けたく
なります。
こうして巨大台風が過ぎ去った後は、「M8」の時と同様に
政治家たちの反省の弁があります。現実問題としてもこれくらい
の構えがあって欲しいものだと思いますが、実際とところは
どれくらいの準備が出来ているのか気になるところです。
物語は台風が過ぎ去った後は、本当にあっという間に幕を
下ろすのですが最後に、玉城の家族が雨降って地固まるように
平常を取り戻してくれたのが良かったです。
リラックスして楽しめるという感じではありませんが、物語
の中に埋没して、ページを捲るスピードが落ちない物語です。



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M8 [本]


M8(エムエイト)

M8(エムエイト)

  • 作者: 高嶋 哲夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 単行本


東海地震が起こると言われてすでに長い年月が経過している。
まだ小学生だった頃に、「明日地震が起きる」という根拠の
ない噂に自分の母親や近所の人たちが気にかけて、いろいろな
身支度をしていたのを思い出す。子供心に心が縮むような
言い知れぬ怖さを抱いて布団にもぐったことが印象に残っている。
その時から技術は日進月歩の進化を遂げて今に至っているのだが
まだ言い知れぬ恐怖が現実のものとして、僕らの前に姿を現して
はいない。
地震の予知連絡会が発足して来る巨大地震の発生に備えてはいるが
果たして本当に予知が出来るのか疑心暗鬼である。
長年囁かれ続けた巨大地震が来る前に、阪神大震災を始めとする
大きな地震が日本各地で発生し、そのエネルギーの大きさには
言葉を失う程である。
諸外国の紛争の地域がテレビで報道される映像を見ているが、
その時のような、それ以上のような瓦礫の山を築いた大震災の
被害を見ていると、実際自分の身に起こった時、自分がどういう
状態で居られるのかが不安で仕方がない。
予知が出来たとして、警戒情報を発令出来たとしても、巨大地震は
やってくる訳で、決して無傷ではいられないであろう。
そうした事を踏まえてわが身を見つめると、何とも心許ない。
震災後、援助物資が到着するまでに一週間は掛かると言われている
なかで、今用意できているのは、頑張っても3日分くらい。
ただ、どこでいつ震災にあうのか分からない現状では、自宅に
いくら用意したところで、それが使える状況かどうかは、その時に
なってみないと分からない。そう考えると公共での震災に対する
備えというものも必要になってくるのだが、現実はそれに対応
出来るだけのものが、備わっているとも思えない。
今回この作品を読んで、改めて備えが甘いかなと感じました。
作品の著者は実際に阪神大震災を経験された事を踏まえてこの作品
を書かれているだけに、内容はリアリティがあります。
物語の舞台は首都東京。ここで直下型の巨大地震が来るという
コンピュータシミュレーションからはじき出した予知を、ひとりの
研究者と、阪神大震災で予知を出せずに甚大な被害を出したことを
背負い続ける元教授が国や都に訴えるのだが、なかなか聞いてもらえない。
そんな中、直下型の地震が発生。多くの被害は出る中で、国、都の
トップがこれまでの姿勢を改めて防災に対する体制を、街づくりの
段階から見直していくという物語。
こうした地震や災害ものの映画がこれまでいくつか出されているので
話としては、新鮮さはあまり感じられない。
しかし、物語の緊迫感という意味ではとても強いものを感じます。
阪神大震災での教訓が、今の東京を始めとして、自分の住んでる地域
に関しても、目に見えるものとしては、なかなか実感できない部分が
多いだけに、確実に起きるとされている巨大地震を前に、不安です。
物語の中でも、震災が起きた後に首相が語るのですが、さほど必要
でもない道路やダムに莫大な予算を掛けてはみても、地震が起これば
それが、人の命を守ることや、被害を少なくする助けにはなっていない。
その予算のいくらかを防災に回すだけでも、被害は少なく出来ると。
選挙の票にはならない防災を市民に訴えたところで、選挙は勝てない
とする政治家の姿勢にも問題があるし、人事として片付けている市民
にしても問題だと。
又、地震の予知に関しても物語の中で触れており、地震学は単なる
学問で終わってはいけない。研究の結果をレポートとしてまとめる
だけではない、命に直結する学問であり、予知情報を発表出来ない
ようでは意味は無いと。
現実問題としてはとても難しい事で、物語の中でもその点に関して
研究者である主人公と元教授が政治家を説得を試みるが、なかなか
決断が出来ないでいる。結局元教授の半ば強引な方法によって市民に
呼びかけが行われるのだが、国としての発表で無かったことにより
大きな動きには結びつかないのだが、それでも幾らかは効果があり
命を落とさずにすんだ人がいた。
物語の後半は、多くが震災での街の描写や、そこでの人々の行動の
描写になっていて、物語の展開としては平坦な印象は否めない感じです。
こうした物語は小説としての形を借りた、強いメッセージを前面に
押し出したレポートという印象を受けます。
巨大地震が必ず来る。その前に政治かも役人も、一般市民もそれに
対する備えが必要だと。そしてそれが東京のような大都市で発生した
となれば損害は数十兆に及ぶ。数千人単位での死者が発生すると。
阪神大震災を経験した今後は、この時の教訓を来るべき巨大地震に
対して生かさなければいけない。この震災で失われた多くの命を
決して無駄にしないためにも、誰となくその備えは必要だと改めて
感じました。
それにしても、最近は各地での地震情報が以前にも増して速報として
テレビのテロップに流れるのだが、巨大地震が来ると言われている
東海、静岡近辺だけが沈黙を保っているのが、嵐の前の静けさのように
不気味に思えてならないのは、私だけだろうか。

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